一週間に何が起きたか
火曜の朝には、北東部ブランデンブルク州でも異変があった。イェンシュヴァルデ褐炭火力発電所の近くにある変電所で、複数の爆発物が見つかっている。
この現場では、導電性の物質を積んだ装置が高圧送電線を損傷させた。ブランデンブルク州でも最も重要な高圧の結節点のひとつだったとされる。
木曜の夕方には、ノルトライン=ヴェストファーレン州ドルマーゲン・ゴーアの変電所付近で、通行人が不審物を通報した。捜査当局が調べたところ、発火装置が仕掛けられていた。こちらは作動せず、被害は出ていない。
ドルマーゲンでは送電設備を短絡させる試みもあった。警察には犯行声明とみられる文書が届いているという。
二つの捜査線
当局が並行して追っているのは、性格の異なる二つの可能性である。
ひとつは外国政府が指示した破壊工作。もうひとつは国内の極左勢力による犯行だ。
この二つは動機も手口の傾向も違う。にもかかわらず併記されているのは、現時点で決め手となる証拠が公表されていないことの裏返しでもある。
ブランデンブルク州の警察は、テロ組織を結成した疑いという枠組みで捜査を進めている。
「ハイブリッド戦」への警戒
ドイツでは、この数か月で警戒水準が上がってきた。
背景のひとつが、ライプツィヒ空港で起きたドローンによる侵入未遂である。ドイツ政府はこれをロシアによるものだと指摘してきた。
軍事的な攻撃と犯罪の境目にある行為を組み合わせる手法は、しばしばハイブリッド戦と呼ばれる。送電網や空港、鉄道といった民間インフラは、その典型的な標的になりやすい。
一方で、ドイツ国内には褐炭火力の稼働そのものに反対する運動も長く存在してきた。狙われた設備が石炭火力に関係している点は、極左勢力の関与を疑う側の根拠にもなっている。
どちらの線であっても、電気が止まれば影響を受けるのは工場と家庭である。
電気は誰にとっても止められる
420万キロワットという規模は、大型の原子力発電所4基分に相当する。それが数時間とはいえ系統から外れた。
ドイツの送電網は欧州各国とつながっているため、需給の急変は隣国にも波及する。冬に向けて需要が増える時期に、同じことが繰り返されるかどうかは注視されている。
変電所という設備は、発電所と違って高い塀と武装警備で守られているわけではない。郊外の敷地にフェンス一枚で囲われているものも多い。攻撃の側から見れば、コストの割に影響が大きい標的になる。
日本の送電設備も事情は大きく変わらない。今回の一件は、インフラ防護の考え方を見直す材料として読める。
まとめ
ドイツで変電所を狙った破壊工作が短期間に繰り返され、褐炭火力の420万キロワット分が一時的に系統から外れた。ブランデンブルク州では爆発物も見つかっている。
当局は外国政府による指示と極左勢力の犯行の両方を視野に捜査を続けている。現時点でどちらとも断定されていない。
読者にとっての持ち帰りは、電力インフラの脆さが「発電量」ではなく「結節点」にあるという点だ。変電所ひとつで大型発電所数基分の出力が落ちる。守るべき場所は、思われているより地味な設備のほうにある。
出典・参考
- Germany Probes Second Power Grid Sabotage Case, Fears of Hybrid Warfare Grow — U.S. News / Reuters(2026年9月2日)
- German authorities probe suspected sabotage after 2 power substation disruptions — ABC News / AP(2026年9月2日)
- Bild reports third German grid sabotage attempt as state election looms — Yahoo News / Reuters(2026年9月4日)



