ゴスピッチ近郊の山
問題の場所は、リカ地方の町ゴスピッチの近くにある。
当局が確認した廃棄物の量は3万4000トンから3万7000トン。10トントラックにして3000台を超える計算になる。
その多くは、2023年から2024年にかけてイタリアから運び込まれたとされる。国境を越えた廃棄物の移動には規制があるが、書類の上で別のものに見せる手口は各国で報告されてきた。
問題が発覚したのは昨年である。それから一年ほど、撤去はほとんど進んでいない。
住民が怒っているのは、廃棄物そのものだけではない。一年経っても山が減らないこと。そして、何がどれだけ危ないのかを誰も説明してくれないことだ。
飲み水の話になる理由
リカ地方は、クロアチアの中でも水の豊かな土地である。
地下水の汚染が指摘されると、話はすぐに生活へ降りてくる。水道の水を飲んでいいのか。畑にまいた水は大丈夫か。子どもに飲ませてよいのか。
この地方はカルスト地形で、石灰岩に穴が多い。水が地下を速く動くため、汚れが一カ所にとどまらず広がりやすいという特徴がある。
汚染源から遠い集落でも安心できない。そう住民が受け止めるだけの理由が、地質の側にある。
集会に参加した俳優のラデ・セルベジヤは、こう語った。
「私はここにいなければならないから来た。自分の国のために立ち上がるのは我々の義務だ。起きたことは恥であり、誰かが責任を取らなければならない」
首相が持ってきた「第一段階」
アンドレイ・プレンコビッチ首相は、集会の数日前にゴスピッチを訪れている。
閣僚を連れ、地元の代表や関係機関と話をした。そこで発表したのが、撤去の第一段階を担う業者を選定したという内容である。第一段階とは、現場から廃棄物を運び出す工程を指す。
住民から見れば、遅い。発覚から一年が経っている。集会の直前という時期も、受け止め方に影響しただろう。
一方で、有害物を含む可能性のある廃棄物の撤去は、そう簡単な作業でもない。中身の分析、受け入れ先の確保、運搬経路の安全確保と、手順がいくつも要る。腰が重いと批判される側にも、事情はある。
ただ、その事情が住民に伝わっていなかった。市民団体が繰り返し訴えてきたのも、その情報の不足だった。
EU全体の問題でもある
この話は、クロアチア一国の不始末では終わらない。
廃棄物がイタリアから来たとされる以上、EU域内の越境移動の管理が問われる。域内は物の移動が自由で、その自由は廃棄物にも及びやすい。
処理コストの高い国から安い国へ。この流れは以前から指摘されてきた。受け入れる側の国では、書類が整っていれば止める理由がない。
日本にとっても他人事ではない。プラスチックや電子機器の廃棄物が国境を越える問題は、アジアでも繰り返し起きてきた。
輸出する側の責任をどこまで問えるか。ゴスピッチの山は、その問いを具体的な形で置いている。
何を追うか
見どころは三つある。
一つは、撤去の第一段階がいつ始まり、どれだけの量が動くか。数字が出れば、進み具合が測れる。
二つ目は、誰が責任を問われるか。運び込んだ側、許可を出した側、見逃した側。捜査の対象がどこまで広がるかで、この件の性格が変わる。
三つ目は、水質の検査結果が公表されるかどうか。住民が最も知りたいのはそこである。
「自然は許さない」と横断幕にはあった。 許すかどうかを決めるのは、まず人のほうだろう。
まとめ
- ザグレブで数万人規模の集会が開かれ、ゴスピッチ近郊に不法投棄された3万4000トン超の廃棄物の撤去と責任追及が求められた
- 多くは2023年から2024年にイタリアから運び込まれたとされ、EU域内の越境廃棄物移動という構造的な問題につながっている
- 住民の不安の中心は飲み水。カルスト地形は地下水が速く広がるため、汚染源から離れた集落も無関係ではいられない
出典・参考
- Tens of thousands rally in Zagreb over Croatia waste cleanup delays — AP / Yahoo News Canada(2026年9月5日)
- Thousands Take to Zagreb Streets Over 33,000 Tonnes of Hazardous Waste Dumped in Croatia's Heartland — The Dubrovnik Times(2026年9月5日)
- Massive Zagreb protest called amid Croatian illegal waste scandal — Balkan Green Energy News(2026年9月)
- Tens of Thousands Protest Croatia Waste Cleanup Delays in Zagreb — Global Banking and Finance Review(2026年9月5日)



