10pct.はホテル経営を受託する会社
10pct.の中心はホテル予約ソフトではなく、ホテル・旅館の運営だ。CEOの中堀友督氏は独立メディアのインタビューで、施設を借りるか運営委託を受け、フロント、マーケティング、ファイナンス、DXまで一貫して担うと説明している。京都の老舗旅館、群馬・みなかみの温泉旅館、白馬のグランピングや一棟貸し施設などが例に挙がる。[2]
| 事業 | 顧客・相手 | 10pct.が提供するもの | 収益の見方 |
|---|---|---|---|
| ホテル経営・運営 | 施設オーナー、投資家 | 現場運営、集客、料金、財務、DX | 運営対価。投資家は宿泊料金と連動する成果型と説明 |
| DXプラットフォーム | ホテル・観光事業者 | 予約、需要予測、料金調整、経営管理 | 外部提供を本格化する段階 |
| M&A・事業承継支援 | 売却を考える施設 | 売主FA、再生と承継の支援 | 接点づくりとアドバイザリー |
| 地域ブランディング | 自治体、DMO | 観光プロモーション、需要分析 | 地域単位の受託事業 |
投資したGMO VenturePartnersは、10pct.を「資産や人を持ちすぎないアセットライトなモデル」とし、宿泊料金に連動する成果型の収益構造を評価した。これは投資家による評価であり、契約条件や利益率が公開されたわけではない。売上、契約施設数、解約率なども今回確認した公開資料には示されていない。[3]
中堀氏は、星野リゾートの投資部門とシンガポール系不動産会社CapitaLand Japanでホテル取得・運用や不動産投資を経験した後、2023年に起業したと説明している。最初の運営案件は、投資ファンドが京都の旅館のM&Aを検討していた際に、改善案を提案して獲得したという。[2] ソフトウェアを先に作って販売先を探すのではなく、運営責任を負う現場からプロダクトを作る順序が、10pct.の事業設計を理解する手掛かりになる。ただし、創業経緯は中堀氏本人の説明であり、案件条件や投資実績の詳細までは公開されていない。
予約システムBe.が好みのデータを集める
自社開発の予約システム「Be.」では、用意された宿泊プランを選ぶだけでなく、部屋の種類や眺望、露天風呂、食事内容などを組み合わせる。10pct.によると、予約の途中で客が何を重視し、どこで迷ったかも蓄積し、広告だけでなく新しい施設の企画へ使う。[2]
この仕組みで重要なのは、予約完了数だけでなく、選択の過程を商品設計へ戻せることだ。例えば「部屋より食事へ予算をかけたい」という傾向が見えれば、料金プラン、食事開発、改修の優先順位を変えられる可能性がある。一般的な予約サイトからの送客だけでは得にくい、自社予約の行動データを持つ意味がここにある。
一方で、データが多ければ自動的に正しい判断になるわけではない。自社予約の利用者は、外部予約サイトの利用者と属性が異なる可能性がある。取得項目、同意、保存期間、外部サービスとの共有、分析対象数も確認が必要だ。TechCreate編集部はBe.を予約完了まで操作しておらず、プライバシー設計や転換率を独自検証していない。
AIは無人化ではなく、接客時間を戻すために使う
10pct.は需要予測、自動料金調整、自社予約比率の向上、経営管理へAIとデータを使う計画を示している。[1] ただし、現場での使い方は施設ごとに変えるという。中堀氏は、京都や群馬の旅館では無人チェックインにせず、裏側の事務作業をAIで効率化し、接客へ使える時間を増やすと説明した。白馬ではチェックインを簡素化しつつ、人員を「サウナコンシェルジュ」として体験づくりへ配置する例を挙げている。[2]
ここから読めるのは、AI導入の評価軸を削減人数だけに置いていないことだ。ホテルごとに、次の順で見る方が実態に近い。
- 紙やExcelへの転記など、接客以外の時間を把握する
- 予約、料金、会計、顧客情報のどこをつなぐか決める
- 空いた時間をどの顧客体験へ振り向けるか設計する
- 売上だけでなく自社予約率、再訪、スタッフ負担を測る
インタビューでは、京都の旅館で給与が33%上がったスタッフもいると紹介された。対象人数、比較期間、基本給・手当の内訳は公開記事からは分からず、会社側の説明として扱う必要がある。全施設の平均や、AI導入だけによる効果とは断定できない。[2]
約4億円の調達後はDXの外販へ広げる
シリーズAは約4億円で、グローバル・ブレインがリードし、GMO VenturePartnersと既存投資家のデライト・ベンチャーズが参加した。使途として、採用、製品開発、ホテル経営DXの外部提供、M&A・事業承継支援、自治体やDMO向けの地域プロモーションが挙げられている。[1]
これは、受託運営で作った仕組みを他社向けプロダクトへ広げる段階に入るという意味だ。ただし、調達は将来の開発余力であり、DX製品の市場適合や収益性を証明しない。導入を検討する施設は、デモだけでなく次を確認したい。
- 運営受託とソフトウェア利用の契約範囲
- 料金が固定、成果連動、売上歩合のどれか
- 既存のPMS、予約サイト、会計との連携方法
- 自社予約比率や利益改善の基準期間と対象施設
- 顧客データの管理者、削除、持ち出し条件
10pct.はホテル売却を考える事業者向けのFAサービスも提供し、再生や事業承継の案件との接点を増やす。老朽設備に数千万円規模の改修が必要になる場合、運営DXだけでは解けず、資本力のある新オーナーへの承継が選択肢になるという。[2] 技術導入と資本政策を別々に扱わない点が、SaaS専業企業との違いになる。
宿泊業向けAIの料金と導入条件を比較するなら「NEWT AIとは?料金とホテル導入の判断材料」も参考になる。業務SaaSがAIワーカーへ広がる別例は「Yoomとは?料金・AIワーカー・7億円調達を解説」で整理した。
次に確かめたいのは施設数より改善の再現性
10pct.の公開情報からは、運営現場を持つこと、Be.の予約データを商品企画へ戻すこと、AIを一律の無人化に使わない方針が確認できる。次に必要なのは、施設ごとに異なる改善を別のホテルでも再現できるかという検証だ。
3〜8週間後には、DXプラットフォームの正式な製品名、料金、外部導入施設、既存システムとの連携仕様を確認したい。自社予約比率、RevPARや営業利益、スタッフの作業時間、顧客満足などを、対象期間と比較条件付きで公開できるかも重要になる。今回、10pct.への取材や施設での実測は行っていない。
まとめ
- 10pct.はAI予約ツールの販売だけでなく、ホテル経営を受託し、現場データを料金・集客・企画へ戻すスタートアップである
- AIの目的を一律の無人化に置かず、事務作業を減らして接客や体験づくりへ人を再配置する点に特徴がある
- 約4億円の調達はDX外販を進める資金であり、導入側は料金、連携、データ管理、改善指標の再現性を別途確かめる必要がある






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