初値から18日後、「過去最高益」の翌朝
7月28日の夜、SKハイニックスはQ2(4〜6月期)決算を発表した。
売上高は79兆3187億ウォン。前年同期比でほぼ3.6倍、前四半期比でも51%増だ。日本円に換算するとおよそ8兆7000億円にあたる。 営業利益は60兆5426億ウォン、前年同期比6.5倍。営業利益率は76%だった。
半導体企業が叩き出す数字ではない。ソフトウェア企業でも珍しい水準だ。
だがSKHYは、その翌朝に9%近く落ちた。時間外取引でさらに値を崩し、130ドル前後をうろついた。上場初日に170ドルをつけた株が、127ドル台になった。
何がそれほど悪かったのか。
「84兆ウォン」には届かなかった
ウォール街が期待していたのは、売上高84兆ウォン、営業利益64兆ウォンだった。
実績は79兆と60兆。差率にすれば5〜6%ほどだ。桁が違うわけではない。それでも、この差が売りの引き金になった。
最大の要因として挙がったのが「HBM4の出荷遅延」だ。HBMの最新世代にあたるHBM4は、Q2中に量産出荷を開始する予定だった。ところが実際の立ち上がりはQ3以降にずれ込んだ。
収益認識は出荷時点で生まれる。製品が完成していても、期末までに顧客に渡せなかった分は売上に入らない。 「記録的な利益」が出た四半期なのに、期待の数字には届かなかった。
HBM4が遅れた理由
HBM4の遅延には、下流にある事情がある。
NvidiaのAIアクセラレータ次世代機「Rubin(ルービン)」の量産立ち上がりが、市場の想定より緩やかだったのだ。RubinはHBM4を前提とする設計だが、前世代「Blackwell」向けのHBM3Eがいまも旺盛に売れている。 Rubinの需要がまだ小さければ、工場ラインをHBM4に切り替える急ぎ足の理由がない。
報道によれば、SKハイニックスはNvidiaへのHBM4出荷計画を当初比20〜30%削減した。ただしNvidiaは「Rubinは予定通りだ」と否定した。実態は外から見えにくい。
決算説明会でSK Oh(オ)CFOはこう言った。「HBM4はすでに10社以上と複数年供給契約を確保した」と。 だが「量産はQ3から」という答えを変えなかった。
受注は積み上がっている。出荷のタイミングがQ3にずれただけだ。それがQ2の数字に表れた。
76%という利益率が正常だとすれば
76%の営業利益率を、どう読むかによって景色が変わる。
一般的な製造業の利益率は5〜15%程度だ。半導体産業でも「優秀」とされるのは20〜30%台だ。76%は割に合わないほど高い。他の製造業には、まず出せない数字だ。
Nvidiaの最新型GPU「Blackwell」は1台あたり192GBのHBM3Eを積む。大規模AIデータセンターには数百〜数千基が並ぶ。単価はDRAMの4〜8倍とされ、需要が続く限りこの水準は落ちにくい。
問題があるとすれば、市場の「期待の速度」だ。
AIブームが加速した2024年以降、アナリストの予想はいつも現実を先回りしてきた。実績が過去最高でも、次の予想はさらに高く設定される。決算を「落第点」にするのは、数字ではなく「期待値」の方だった。
「史上最大」の自社株買いへ
8月19日、SKハイニックスの取締役会は40兆ウォン(約4.3兆円)の自社株取得・消却を決議した。
韓国上場企業の歴史で最大の自社株買いだ。発行済み株式の3.3%に相当する約2407万株を、8月20日から11月19日の3カ月で取得する。取得した全株は即座に消却する方針だという。
あわせて株主還元方針を改定した。「2025〜2027年の累積FCRの50%以上を株主に還元する」と明文化した。 これまでの還元は「できる限り」の水準にとどまっていた。それを数値コミットメントに変えた。
ソウル株式市場は翌20日に12%上昇で応えた。
翌21日にはサムスン電子が「最大80兆ウォン(約8.7兆円)の株主還元計画」を相次いで発表した。 韓国の半導体2強が、ほぼ同時に大型還元を打ち出した格好になった。
6週間で動いた株価と、残る問い
8月22日時点のSKHYは163.41ドルで取引された。
公募価格の149ドルからは9.4%上昇している。ただし上場初日の終値168ドルには、まだ届いていない。
| 日付 | 出来事 | SKHY株価 |
|---|---|---|
| 7月10日 | ナスダック上場初日 | 終値168.01ドル(+13%) |
| 7月28日 | Q2決算発表後 | 9%近く急落、一時127ドル台 |
| 8月19日 | 40兆ウォン自社株買い発表 | ソウル市場で+12% |
| 8月22日 | 現在 | 163.41ドル |
6週間で、株は上がり、落ち、戻った。
HBM4の出荷がQ3から始まるとして、次の節目はNvidiaのRubin量産ペースだ。RubinがどのスピードでHBM4を必要とするかが、SKハイニックスの売上をほぼ直接決める。 「Nvidiaへの供給シェア3分の2」と伝えられるSKハイニックスにとって、ここは避けて通れない。
郭副会長は7月10日、「需要は巨大だ」と言った。
その言葉は正しい。ただ、「いつ需要が来るか」は、まだ答えが出ていない。
ソース:
- SK Hynix rises 13% in Nasdaq debut — CNBC(2026年7月10日)
- SK Hynix shares tank as exponential earnings growth fails to satisfy AI-charged expectations — CNBC(2026年7月29日)
- SK hynix Q2 2026 slides: record revenue, 76% operating margin — Investing.com
- SK Hynix Plans $28.6 Billion Share Buyback — Bloomberg(2026年8月19日)
- Samsung plans up to $80 billion in shareholder returns after SK Hynix buyback — CNBC(2026年8月21日)

