MTCH3380Pとは?
MTCH3380Pは、Microchip Technologyが2026年10月8日に発表した量産向けタッチコントローラーです。センサーを順番に読む方式ではなく、12基のADCを使って複数チャネルを並列に取得することで、入力点数が多い操作面でも応答とノイズ耐性を両立させる設計です。[1]
| 項目 | MTCH3380P | MTCH3240P |
|---|---|---|
| 自己容量入力 | 最大38 | 最大24 |
| 相互容量入力 | 最大64 | 最大32 |
| ADC | 12基 | 12基 |
| 動作温度上限 | 105度 | 105度 |
| 1万個時の参考単価 | 1.06ドル | 0.80ドル |
両製品は、タッチボタンを実装するためにアプリケーション用マイコンの処理時間を使う代わりに、専用コントローラー側でセンシングを受け持ちます。したがって、主マイコンの変更を抑えながら操作面を増やしたい家電、車載周辺機器、産業機器、医療機器などが主な検討対象になります。
並列センシングは従来方式と何が違う?
一般的な静電容量式タッチでは、複数の電極を切り替えながら測定します。入力点数が増えると一巡にかかる時間が伸び、湿気やノイズを除く処理も増えます。MTCH3380P/3240Pは12基のADCで複数信号を同時に取得し、Microchipは従来の同社方式より高速な応答と高い信号対雑音比を狙ったと説明しています。[1]
| 設計上の問い | 順次測定で起こりやすい課題 | 並列測定で期待する効果 |
|---|---|---|
| 入力点数を増やす | 全点を読む時間が延びる | 複数チャネルを同時取得する |
| ノイズを除く | 測定と再試行の時間が増える | 同時点の信号を比較しやすい |
| 素早い操作を拾う | スキャン周期外の変化を逃しうる | 取得間隔を短くしやすい |
ただし、並列であることだけで完成品の反応が保証されるわけではありません。電極の大きさ、間隔、配線、カバー素材、電源ノイズ、ファームウェア設定によって結果は変わります。TechCreateは評価ボードで実測していないため、発表値を製品全体の性能としては扱いません。
手袋や水分、厚いカバーにどこまで対応する?
MTCH3380Pの製品ページは、手袋、水分、厚いオーバーレイでの操作を想定し、ガラスでは最大10mmのカバーに対応するとしています。また、動作温度はマイナス40度から105度、電源電圧は2.7〜3.47V、ホストとの通信はI2Cです。[2]
これらは設計上限であり、すべてを同時に満たす保証値ではありません。例えば10mmのガラス越しに手袋で操作し、さらに水滴がある条件では、電極面積や感度の調整が必要です。量産判断では、実際の筐体、塗装、接着剤を含む試作品で確認します。
確認項目は次のように分けると、カタログ値だけで判断しにくくなります。
- 乾燥した指、手袋、水滴がある状態での反応
- 隣接ボタンの誤検出と同時押し
- モーター、無線、電源回路が動くときのノイズ
- 起動直後、温度変化、長時間使用後の再校正
- 10mm未満でも樹脂や接着層が異なる場合の感度
ホスト側の実装は減らせる?
MicrochipはLinuxとZephyr向けのホストドライバーを用意し、設定用GUIと、コード生成を含む開発支援を提供すると説明しています。[1] これにより、タッチ測定そのものを一から実装する工数は減らせます。
一方で、製品側に残る作業もあります。
- 電極パターンと基板配線を設計する
- I2Cの通信異常、再起動、タイムアウトを処理する
- タッチイベントを製品の状態遷移へ結び付ける
- 誤操作時の安全動作と診断を実装する
- 量産個体差を含む試験条件を決める
半導体開発そのものをAIで短縮する話題とは異なりますが、専用部品を選ぶ判断にも「どこまでを部品へ任せ、どこからを自社設計に残すか」という境界があります。Vinciの半導体設計エージェントは設計工程の自動化を扱い、本製品は完成品の入力回路を分離する選択肢です。
価格差はどう判断する?
Microchipの発表価格は、1万個購入時でMTCH3380Pが1個1.06ドル、MTCH3240Pが0.80ドルです。差は0.26ドルなので、入力点数が32相互容量または24自己容量で収まるなら、MTCH3240Pが候補になります。反対に、操作面を増やすために別のICやマイコンを追加するなら、上位品の方が基板面積や実装点数を抑えられる可能性があります。日本法人が配信した日本語発表でも、型番、チャネル数、参考単価を同じ条件で確認できます。[3]
| 判断軸 | MTCH3240Pが合いやすい | MTCH3380Pが合いやすい |
|---|---|---|
| 入力点数 | 24自己/32相互以内 | それを超え、38自己/64相互まで必要 |
| 部品単価 | 1万個時0.80ドルを重視 | 0.26ドル差より入力余力を重視 |
| 将来変更 | 操作面が固定 | 派生機種や追加ボタンを見込む |
| 評価項目 | 必要点数で十分 | 多数点での応答とノイズを確認したい |
発表価格には、評価ボード、認証、開発工数、供給契約、地域ごとの流通費は含まれません。また、資金調達額や発表時の注目度と同様に、部品の公称価格は顧客の採用実績を示すものではありません。量産数量と納期は販売代理店やMicrochipへの見積もりで確かめます。
採用前に何を試すべき?
最初の比較では、同じ電極基板を使い、順次測定の現行設計とMTCH3380P/3240Pを比べます。押下からイベント通知までの時間だけでなく、誤検出、取りこぼし、温度、消費電力、復旧時間も記録します。
安全に関係する操作では、タッチ検出だけに停止や起動を任せません。MicrochipはIEC/UL 60730 Class B対応を支える機能を示していますが、完成品の安全認証を自動的に満たすという意味ではありません。[2] 機械式の非常停止、二重確認、故障診断など、製品側の要求から逆算します。
また、専用コントローラーでソフトウェア量を減らせても、部品を一つ増やす供給リスクは生まれます。試作時には代替品、ピン互換性、長期供給、ファームウェア更新手段まで確認すると、量産後の変更判断がしやすくなります。関連する産業向けハードウェアの事業化では、Parallel Systemsの自動貨車も、技術仕様と実運用の間にある検証を扱っています。
まとめ
- MTCH3380Pは12基のADCで複数のタッチ入力を並列取得し、最大38自己容量/64相互容量を扱う専用コントローラーだ。
- 105度、10mmガラス、手袋や水分への対応は設計の選択肢を広げるが、実際の筐体とノイズ環境での検証を省けるわけではない。
- 採用判断では0.26ドルの単価差だけでなく、必要入力数、誤検出、ホスト実装、供給、完成品の安全要求を同じ表で比べたい。
出典・参考
- Microchip Technology, Microchip Introduces Its First Turnkey Touch Controllers for Buttons, Sliders, Wheels With Parallel Sensing, 2026年10月8日
- Microchip Technology, MTCH3380P product page, 2026年10月12日確認
- ドリームニュース/Microchip Technology Japan, ボタン、スライダー、ホイール向け並列センシング対応タッチコントローラを発表, 2026年10月12日確認






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