「68%」は米国のGoogle検索全体の数字
68.01%という数字を公表したのは、マーケティング調査サービスのSparkToroだ。2026年6月8日の報告で、Similarwebが収集した米国のPC・モバイルブラウザの行動データを使い、同年1〜4月のGoogle検索を分析した。日本の検索全体を測った数字ではなく、Googleのモバイル検索アプリも対象外である。[1]
ゼロクリックには、答えを得て検索を終える行動だけでなく、リンクを開かずに別の言葉で検索し直す行動も含まれる。「用語の意味を読んで満足した人」と「欲しい情報がなく、調べ直した人」を、この割合だけで区別することはできない。AIがすべての疑問を解決した割合と読むと、実態から離れてしまう。[1]
長期の比較にも注意が必要だ。SparkToroは、過去の調査と2026年の調査ではデータ提供会社や対象パネルが違うと明記している。モバイルとPCの構成比にも重み付けを行っており、Googleの全検索ログを直接集計した値ではない。方向を把握する材料にはなるが、小数点以下まで自社サイトへ当てはめる数字ではない。[1]
AI要約が出る検索では、リンクを開く割合が低い
Googleの「AI Overviews(AIによる概要)」は、検索結果の中にAIがまとめた回答を表示する機能だ。影響を考えるうえでは、AI要約がある検索と、ない検索を比べた調査が参考になる。米国の調査機関Pew Research Centerは、米国成人900人の2025年3月の閲覧行動をもとに、68,879件のGoogle検索を分析した。[2]
AI要約がある検索ページでは、従来型の検索結果リンクをクリックした割合が8%だった。要約がないページでは15%。AI要約の中にある出典リンクをクリックした割合は、要約があるページへの訪問の1%にとどまった。8%は「AI要約の出典がクリックされた割合」ではない。[2]
ただし、これは同じ検索条件でAI要約だけを無作為に出し分けた実験ではない。Pewは3月の検索語を、4月7〜17日に再検索して結果を収集している。検索結果は時間とともに変わり、AI要約が出やすい質問と出にくい質問もある。AI要約と低いクリック率の関連は示しているが、差のすべてをAIの効果と断定できない。[2]
サイト運営で見落とせないのは、回答に出典として載ることと、その出典を読みに来てもらうことの違いだ。引用が増えていても、流入や売上が同じ割合で増えるとは限らない。
メディアへの検索流入は、前年比の減少幅が拡大
サイト側の変化を測ったChartbeatの「2026 Publisher Playbook」では、同社の計測ネットワークにおけるGoogle検索からの流入が、2025年7月から2026年7月に40.2%減少した。その前の1年間は21.9%減で、減少率の絶対値は18.3ポイント広がっている。これは、対象ネットワーク内で検索流入減が加速したことを示す。[3]
| 流入元 | 2025年7月 (前年同月比) | 2026年7月 (前年同月比) |
|---|---|---|
| Google検索 | 21.9%減 | 40.2%減 |
| Google Discover | 6.6%減 | 34.3%減 |
出典:Chartbeat「2026 Publisher Playbook」4ページ。Discoverは、検索語を入力する検索とは別のおすすめ記事配信面。表の数値は全ウェブサイトや日本市場の平均を示すものではない。[3]
この40.2%と、SparkToroの68.01%は直接つながる数字ではない。前者はメディア側への流入の変化、後者は検索した後の行動の割合だ。期間も観測対象も違い、並べただけで「AIが何割の流入を奪ったか」は計算できない。検索順位、検索需要、記事の構成、他の検索機能などを切り分ける必要がある。
それでも、検索から来た読者に広告を見てもらうメディアや、解説記事を入口に問い合わせを集める企業にとって、影響は小さくない。同じ記事制作費をかけても、サイトへ来る機会が減れば、広告表示や問い合わせへの入口も細る可能性がある。
AIに引用されるだけでは、失った訪問を埋められない
AIサービスからの紹介流入が増えれば、Google検索の減少を補えるのだろうか。Chartbeatの同レポートでは、AI経由の流入は2年間で8倍になった一方、流入全体では約0.01%という小さな規模だった。対象メディアの集計であり、AI経由の集客がすべての業種で小さいという意味ではないが、増加倍率だけでは代替効果を判断できない。[3]
たとえば、業務ソフトを売る企業のサイトを考えてみる。一般的な用語の説明は、検索画面の短い回答で用が済むかもしれない。一方、自社で検証した連携方法や、契約前に確かめたい制約、利用条件ごとの比較は、製品を選ぶ人が原文へ進む理由になり得る。これは編集部による施策の例で、流入回復を実証した結果ではない。
記事を増やす前に考えたいのは、そのページを開くと、要約だけではできなかった何を判断できるのかという点だ。実測データ、検証の手順、一次資料、問い合わせに必要な情報など、原文を読む価値と、次の行動への導線を一緒に整える必要がある。
AIからの引用調査も、分母を確認したい。関連記事の「AI検索に引用される記事とは|比較型32.7%の分母を読む」では、引用されたページの構成比と、引用される確率を分けて解説している。
自社サイトでは「表示・訪問・成果」を分けて測る
自社サイトの流入が減ったときは、まずSearch Consoleとアクセス解析で、どこが変わったのかを確認したい。Googleは、AI Overviewsや、対話形式で検索を深めるAI Modeのリンク掲載にも従来のSEOの基本が有効で、専用の追加要件や特別な構造化データは不要と説明している。AIへの引用を保証する仕掛けを探す前に、検索に登録され、内容を読める状態かを点検することが出発点になる。[4]
編集部として勧めたい確認順は、次のとおりだ。
- 表示機会が減ったのかを調べる。 同じページ・検索語について、同じ長さの期間で表示回数、順位、クリックを比較する。国や端末、季節性、サイト改修や計測変更も確認する。
- 表示されても開かれなくなったのかを調べる。 表示回数と順位が近いのにクリック率が落ちた検索語では、実際の検索画面も見る。AI要約、広告、動画などの表示を記録するが、1回の画面だけで原因を確定しない。
- 訪問後の成果を確かめる。 問い合わせ、購入、登録などを、流入元別の件数と率の両方で追う。訪問が減って成果率が上がっても、成果の件数まで回復したとは限らない。
- 再訪する入口を育てる。 関連記事、ニュースレター、ブックマークしたくなる資料などを用意し、再訪や登録につながったかを測る。検索以外へ配信先を増やしただけで成功とは扱わない。
Googleの公式資料でも、Search Consoleに加えて、Google Analyticsなどでコンバージョンや滞在時間を確認する考え方が示されている。AI関連の表示や引用を追う場合も、それをサイト訪問や事業成果と同じ指標にはしない。[4]
検索画面だけで用が済む場面が増えるほど、サイトには「もっと詳しく知る」先の価値が問われる。企業やメディアが取り組むべきことは、自社で成果につながっているページを特定し、そこでしか確かめられない情報と、次に進む理由を厚くすることだ。
まとめ
- 68.01%は、米国のGoogle検索全体を対象としたゼロクリック率。 AI検索だけの割合、日本の割合、サイト流入の減少率へは読み替えられない。
- AI要約とクリック減少の関連、メディアへの検索流入減の加速は、別々の調査で確認できる。 両者を結び付けても、AIが減少分のすべてを引き起こしたとは断定できない。
- 引用されること、訪問されること、成果につながることを分けて測る。 原文を読む価値と再訪する入口を整え、自社の数字で改善を判断したい。
出典・参考
- SparkToro「In 2026, Less than One Third of Google Searches Still Send a Click」(2026年6月8日)。データ提供:Similarweb。
- Pew Research Center, Washington, D.C.「Google users are less likely to click on links when an AI summary appears in the results」(2025年7月22日)。日本語の要約・説明はTechCreate編集部による。Pew Research Center has published the original content in English but has not reviewed or approved this translation.
- Chartbeat「2026 Publisher Playbook: 9 Strategies to Boost Acquisition, Engagement, and Loyalty」(2026年、4・6ページ)。2026年10月18日確認。
- Google Search Central「AI features and your website」。2026年10月18日確認。
カバーはGoogle検索を利用する場面のイメージ写真で、2026年のAI要約の実画面ではありません。写真:Solen Feyissa/Unsplash(Unsplash License)。1200×630へトリミング。







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