結論は分母を見る
32.7%は「比較記事がAI検索に強い」ことを支える材料にはなる。しかし「記事の32.7%が引用される確率」ではない。調査期間中に抽出された引用ページのうち、比較・おすすめ・選び方に関するページが占めた割合である。
分母を誤ると、施策も誤る。引用ページの構成比は市場全体の傾向を見る数字であり、自社の記事が引用される確率ではない。確率を知るには、公開したページ数、対象プロンプト数、露出回数など別の分母が必要になる。
48万件調査の中身
AI Search Cited Award 2026 下期は、株式会社Wanokuniが運営するBrand UPの調査である。公開資料によれば、2026年2月から7月に計測し、21部門122カテゴリを対象にした。
| 項目 | 公開された条件 |
|---|---|
| 対象AI | ChatGPT、Gemini、Google AI Overviews、Google AI Mode |
| 対象範囲 | 21部門、122カテゴリ |
| 質問数 | 1カテゴリあたり90問 |
| 計測期間 | 2026年2月〜7月 |
| 抽出引用数 | 484,537件 |
| 部門1位 | 21部門で20サイトに分散 |
2部門で1位になったのはASPICだけだった。部門1位のスコアも、リユース・買取部門の「おいくら」63.8%から、旅行・店舗・グルメ部門のYahoo! JAPAN 15.6%まで開いている。
この分散は、一つの万能なLLMO施策で全業界を勝てるとは限らないことを示す。製品の比較が中心になる領域と、店舗情報、料金、一次データが重視される領域では、AIが答えを組み立てるときに必要な根拠が違う。
調査元のWanokuniはAI検索最適化サービスを提供している。事業と調査テーマに関係があるため、数字を使う際は調査主体と方法を併記したい。商用事業者の調査だから無効なのではなく、第三者が再現できる範囲を見極めるためである。
32.7%の残り
公開資料は、質問の具体性によって参照されるソースが変わると説明している。候補を広く尋ねる質問では比較メディアが選ばれやすく、料金、機能、条件のような具体的な質問では公式サイトが参照されやすい。
したがって、残る67.3%を一種類のコンテンツ名で埋めることはできない。公式の製品ページ、料金表、ヘルプ、企業情報、ニュース、事例など、質問に応じた複数の情報源が含まれると考えるのが自然だ。ただし、全分類が開示されていない以上、これは公開資料からの推測を含む。
自社サイトでは、比較記事だけを増やすよりも、次の接続を作るほうが堅い。
- 比較・選び方記事で候補と評価軸を示す
- 各製品ページで料金、機能、対象、制約を明記する
- 導入事例で前提条件、実施内容、結果を数字で示す
- すべてのページに更新日と運営主体を表示する
- 関連ページを内部リンクで結び、矛盾する記述をなくす
AI検索向けの基本設計は、AIO・AI検索最適化のガイドでも解説している。今回の調査から加えたい視点は、引用されるページ型を一つに固定せず、質問の段階ごとに根拠を用意することだ。
別調査では27.3%
数字の頑健さを見るには、同じテーマの別調査を並べるとよい。Optyino.aiの2026年7月16日発表は、2025年9月から2026年5月に58種類の商品推薦・比較プロンプトを測定した。
公開値は36,642件のAI回答、367,553件の引用URL、9,126ドメインである。8つのモデル・モードを対象に、ドメイン単位で引用元を分類している。
| 分類 | 引用数・割合 | 読み方 |
|---|---|---|
| 比較・ランキングメディア | 100,489件、27.3% | 比較を主目的とするドメイン |
| 狭義のレビュー系 | 8.9% | 厳しい分類条件でのレビュー媒体 |
| 広義のレビュー関連 | 48.9% | EC、UGC、技術レビューなどを含む |
Wanokuniの32.7%とOptyino.aiの27.3%は近いが、同じ指標ではない。前者は引用ページの内容、後者は主にドメインの媒体種別を分類する。対象AI、期間、プロンプト、カテゴリも異なる。
なお、Optyino.aiの現行公開ページでは「18,218回答の85.1%」という組み合わせは確認できない。古い抜粋や異なる分類を混ぜず、現在掲載されている母数と定義で扱う必要がある。
施策に変える手順
調査数字は、コンテンツ本数のノルマではなく、仮説を作る材料として使う。実務では次の順に落とし込む。
1. 顧客の質問を集める
「おすすめは何か」「料金はいくらか」「自社条件で使えるか」を分ける。営業、問い合わせ、検索クエリから実際の表現を集めれば、作るべきページ型が見える。
2. 根拠の持ち主を決める
比較軸は編集記事、価格は公式ページ、成果は事例、障害対応はヘルプというように、情報ごとの正本を一つ決める。同じ価格を複数記事へ手入力すると、更新漏れで信頼性を損なう。
3. AIごとに観測する
ChatGPTだけでなく、GeminiやGoogleのAI表示も見る。ログイン状態、地域、日付で回答が変わるため、プロンプトと観測条件を保存する。AIOとは何かを整理した記事にあるように、単発のスクリーンショットだけで順位を断定しない。
4. 引用後の行動を見る
引用数が増えても、サイト訪問や問い合わせにつながらなければ事業成果は別問題だ。AI回答内でブランド名が出た回数、引用URL、参照セッション、問い合わせまでを分けて記録する。
提案書の確認項目
AI検索対策を外注するときは、「引用率が上がる」という表現より、測定条件を確認したい。
- どのAIサービスとモードを対象にしたか
- いつ、どの地域・アカウント条件で測ったか
- プロンプトは何件で、どう選んだか
- 回答、引用URL、ドメイン、ページのどれを分母にしたか
- 比較記事やレビューの分類規則は何か
- 同じURLの重複引用をどう数えたか
- 自社サービスに関係する質問と無関係な質問を分けたか
- 改善の成果を引用数、流入、商談のどこで判定するか
Wanokuniの公開資料からは、122カテゴリの選定基準、90問の全文、ページ分類の全ルールまでは確認できない。これは調査を使えない理由ではなく、32.7%を超えて断定しないための境界線である。
よくある質問
AI検索には比較記事が最も強いですか
比較記事は有力な形式だが、常に最強とは言えない。候補を尋ねる質問では選ばれやすく、料金や仕様の確認では公式ページが適する。質問の種類に合わせて根拠を用意する必要がある。
32.7%は引用される確率ですか
違う。調査で抽出された引用ページのうち、比較・おすすめ・選び方関連が占めた構成比である。個別記事の成功率を示す数字ではない。
27.3%と32.7%はどちらが正しいですか
両方とも各調査の定義内の値で、直接の優劣は付けられない。ページ内容とドメイン種別という分類単位、対象期間、AI、プロンプトが異なる。
公式ページにもSEO記事が必要ですか
必要な場合が多い。比較記事が候補を示しても、価格、機能、契約条件、制約の正本が不足すれば、AIも利用者も最終確認ができない。更新し続けられる公式情報が土台になる。
AI検索対策の成果は何で測りますか
対象プロンプトでのブランド言及、引用URL、参照流入、指名検索、問い合わせを段階別に見る。引用されたかだけで事業成果を断定しないことが重要だ。
まとめ
- 32.7%は比較記事の成功率ではなく、48万4,537件の引用から見たページ構成比である。施策へ使う前に分母を確かめたい
- 別調査の27.3%は方向性を補強するが、分類単位や質問設計が異なる。近い数字でも同じ指標として混ぜない
- 比較記事、公式仕様、事例を質問段階に合わせて接続すると、単一形式へ偏らずAI検索の引用機会を広げられる
出典・参考
- AI Search Cited Award 2026 下期(Brand UP/株式会社Wanokuni)
- AI検索で最も引用されるサイトは?21部門122カテゴリの「AI Search Cited Award 2026 下期」を発表(株式会社Wanokuni、2026年9月4日)
- 生成AIの商品レコメンド回答における比較・レビュー系メディア引用率調査(Optyino.ai、2026年7月16日)
- Google Search's guidance on generative AI content(Google Search Central)



