「高潮と暴風、同時に来る」
気象庁が沖縄本島に出した特別警報は3種類が重なっている。暴風、高潮、そして大雨だ。特別警報は「甚大な被害が起こるおそれが著しく高い」と判断されたときに限って出され、通常の警報より一段上の危険度を示す。
高潮に対して特に注意が必要な地域は那覇市の沿岸部から浦添市にかけての低地帯だ。台風の中心が本島の南西を通過する際、海水が陸側に吹き寄せられて潮位が大きく上昇する。1959年の台風14号ではこの地域で高潮による大きな被害が出た。
漁港や港湾では前日から船の避難誘導が行われ、那覇空港は28日の全便を欠航とした。
先島諸島はすでに通過
宮古島や石垣島などの先島諸島には台風が27日夜のうちに最接近した。気象庁の記録では最大瞬間風速60〜70メートルを記録した地点があり、農作物への被害が確認されている。水道施設の一部では断水が発生した。
沖縄県によれば、先島での停電は27日深夜時点でおよそ1万7000戸に及んだ。沖縄電力は「送電設備の被害状況を確認しながら順次復旧に向かう」としているが、道路の冠水で作業車が入れない地区がある。
29日以降、九州・四国への影響
台風スリゲは沖縄を通過した後、28日夜から29日にかけて九州南部と四国に接近する見込みだ。勢力は徐々に弱まる予想だが、それでも「強い」勢力を維持する可能性がある。
気象庁は「九州南部と四国では大雨と暴風に警戒を」と呼びかけ、各県の防災当局は避難情報の準備を進めた。新幹線や飛行機の運休・欠航も29日以降に拡大する可能性がある。
秋に「猛烈に強い」台風が沖縄本島に接近するのは珍しい。海水温が高い状態が続いていることが、台風が勢力を落とさずに北上できた要因の一つとされる。
台風スリゲの発生から発達まで
台風26号スリゲはフィリピン付近で発生し、猛烈な勢力に発達しながら北西進した。9月26日の時点では中心気圧が970ヘクトパスカル程度だったが、29時間で945ヘクトパスカルまで急激に深まった。「急発達」と呼ばれる急速な強化で、気象庁も「台風の目がはっきりと確認できる状態」と発表した。
台風が急発達する要因の一つは、経路上の海水温が高いことだ。2026年夏の西太平洋は海面水温が例年より1〜1.5度高い状態が続いており、秋になっても熱量が残っている。気象庁の研究部門は「地球温暖化との直接的な因果関係の証明は難しいが、高水温が台風の発達を後押しする傾向は強まっている」と述べた。
過去の台風被害との比較
沖縄では1959年の台風14号(ヴェラ)が1,200人以上の犠牲者を出した。その後、建築基準の強化や防潮堤の整備が進み、同規模の台風でも被害が大幅に減っている。それでも今回のように945ヘクトパスカルの台風が直撃すれば、農業・観光・インフラへの経済的被害は数百億円規模になるとみられる。
沖縄タイムスによれば、台風を前に観光客を含む約8,000人が前日中に離島や本島を脱出した。観光シーズン終盤の今回の被害が地元経済に与える影響は、復旧後も数週間は尾を引くとされる。
農業被害も懸念される。特にサトウキビとゴーヤーの生産地として知られる宮古島では、前日の台風通過で作物の倒伏が相次いだ。農協は被害状況の集計を急いでいる。
避難の判断はいつすればよいか
今回の台風では「避難指示が深夜に出た地域がある」という声が住民から上がった。気象庁や沖縄県は「特別警報が出る前の早い段階で自主避難を」と呼びかけるが、昼間に出された警報がその夜の判断の遅れにつながるケースもある。
内閣府の防災白書は「ハザードマップと台風の予想進路を重ねて自分のいる場所のリスクを事前に把握し、特別警報を待たずに動くことが大切だ」と指摘している。台風シーズン終盤の今、改めて確認したい点だ。
まとめ
台風スリゲは沖縄に記録的な強度で接近した。先島諸島はすでに直撃を受け、沖縄本島は28日1日かけて最悪の風雨にさらされる。高潮と暴風が重なる時間帯は特に危険で、低地での浸水と建物被害が懸念される。台風は29日以降、九州・四国にも本格的な影響をもたらす見通しだ。
出典・参考
- [1] 気象庁「台風26号(スリゲ)に関する情報」 2026年9月28日
- [2] ウェザーニュース「猛烈に強い台風26号(スリゲ)は沖縄本島の東へ 急発達し台風の目がくっきり」 2026年9月27日
- [3] 沖縄県危機管理課「台風26号に伴う被害状況について」 2026年9月28日






