1人が死亡、数十件の救助要請
ニュージャージー州当局によれば、アトランティックシティ近郊で1人が水難で死亡した。浸水した車の中で発見されたもので、被害者は運転中に急激な増水に巻き込まれたとみられる。
沿岸部では28日未明から数十件の救助要請があり、海岸警備隊と消防が小型ボートで住民を救助した。アトランティックシティのリゾートホテル地区では地下駐車場が完全に水没し、500台以上の車が使えなくなった。
地下鉄も高速道路も
ニューヨーク市では地下鉄の一部路線が運休を余儀なくされた。特にブルックリン区の低地を走るN線とD線は浸水のため28日早朝から全面停止した。
コネチカット州とニュージャージー州を結ぶI-95高速道路の複数区間では水が路面に達し、通行止めが相次いだ。フィラデルフィアでも市街地の地下道が浸水し、出勤時間帯の交通が混乱した。
ニューヨーク市緊急管理局のジェシカ・タン局長は「嵐は速度が遅く、同じ場所に大量の雨が降り続けた。インフラが設計上の想定を超える状況になった」と語った。
「これが新しい普通だ」
ハリケーン・サンディは2012年10月に米東部を直撃し、ニューヨーク・ニュージャージーで100人以上が死亡した。あれから14年、同地域では洪水対策の整備が続けられてきた。
しかし気候変動によって海面水位は上昇を続けており、今回のような大潮に低気圧が重なると、以前より小さなエネルギーの嵐でも記録的な高潮になりやすい。コロンビア大学のアース・インスティテュートは「アトランティックシティの10年に1度の洪水が、2050年代には3〜5年に1度になる可能性がある」とする試算を公表している。
「これが新しい普通になる」とタン局長は述べた。
復旧の見通し
アトランティックシティでは28日昼時点でも住宅街への浸水が続いており、本格的な排水には数日かかるとみられる。停電は沿岸部のニュージャージーで約3万2000戸に達した。
米連邦緊急事態管理庁(FEMA)はニュージャージー州とコネチカット州に対して連邦支援の準備を始めた。州知事は「被害規模を確認した上で連邦災害宣言を申請する」と述べた。
28日夕方には低気圧が北東へ離れ、風雨は峠を越える見込みだ。ただし地盤が飽和しているため河川の水位は29日にかけてさらに上昇する地域もある。
ノーイースターとは何か
ノーイースター(Nor'easter)は北東の方向から吹き込む強風を伴う大型低気圧を指す米国の気象用語だ。大西洋岸の海面水温が高い時期に発達しやすく、秋から春にかけて米東部に大雪や大雨をもたらす。今回は降水量が記録的なだけでなく、満潮のタイミングと重なったことで高潮が増幅した。
満潮と低気圧による気圧低下と風による吹き寄せが重なる現象を「高潮」と呼ぶ。今回のアトランティックシティでは気圧低下分で約0.5メートル、吹き寄せ分で約1.6メートルの計2.1メートルの高潮が発生した計算になる。
「同じ嵐でも、満潮か干潮かで被害の差は数倍になる」とニュージャージー工科大学の気象学者フォルコン・ベンツは指摘した。今回はほぼ最悪のタイミングで二つが重なった形だ。
インフラの老朽化という問題
ブルックリンで地下鉄が浸水した背景には、1900年代初頭から続く地下インフラの老朽化がある。ニューヨーク市交通局は「数十年分のメンテナンスの遅れがある」と認めており、豪雨のたびに同じ区間で浸水が繰り返されている。
2012年のサンディ後に立ち上げられた洪水対策プロジェクト「SecondAvenue地下水管」は2030年完成を目指しているが、予算不足で遅延が続く。
まとめ
ハリケーン・サンディ以来の高潮が沿岸部を直撃し、1人が死んだ。洪水対策に14年かけても防ぎきれなかった。気候変動で海面が上がる中、「100年に1度」の嵐が生涯に複数回起きるようになると専門家は指摘している。問われるのは次の嵐までに何ができるかだ。






