「見たことがない」の中身
スケイフ教授の発言は、社交辞令ではない。
英気象庁は、太平洋赤道域(ニーニョ3.4海域)の海面水温について、平年を3度以上上回る予測値を示した。通常のエルニーニョによる上昇幅は1度から2度で、2度に達すればすでに「かなり大きな事象」とされてきた。
3度という数字は、この物差しを外れている。19世紀以来、あるいは人の記憶にある範囲では最大級とも言われる規模である。
教授はこう続けている。「これは間違いなく前例のない事象だと言っておくべきでしょう」
海が3度上がるということ
海面水温が数度上がるだけで、なぜ世界の天候が変わるのか。
太平洋の熱がいつもと違う場所にたまると、その上を通る大気の流れごと押し出される。この押し出しが、遠く離れた地域の雨や気温にまで波及する。これがエルニーニョの基本的な仕組みだ。
今回のように上昇幅が大きいと、影響が及ぶ範囲も広がりやすい。南米や西太平洋の熱帯地域でとくに強く出ると見られている。
モンスーンと欧州、逆方向の影響
影響の出方は、地域によって正反対になる。
インドの夏のモンスーンは、雨量が平年を大きく下回る見通しだという。農業への影響が懸念される規模である。
一方、北西ヨーロッパでは逆に、秋から初冬にかけて雨と嵐が増えると見られている。時期としては11月前後が焦点になりそうだ。
同じ現象が、乾かす地域と濡らす地域を同時につくる。エルニーニョが「遠隔操作」と呼ばれるゆえんでもある。
「観測史上最も暑い年」への号砲
このエルニーニョが本格化すれば、2027年の世界の気温にも直結する。
英気象庁の見立てでは、2027年は2024年を上回り、観測史上もっとも暑い年になる可能性が高いという。産業革命前と比べた気温上昇が、一時的に1.5度を超える年になるとの見通しも示されている。
エルニーニョそのものは自然現象だが、それが乗っかる「土台」の気温自体がすでに底上げされている。3度規模のエルニーニョが、その土台の上にさらに乗る形になる。
日本の冬にも届く波紋
日本への影響は、まだ細部まで固まっていない。
ただし、モンスーンの乱れや欧州の荒天が起きれば、農産物の価格や海運のスケジュールを介して、巡り巡って日本の店頭にも届く可能性がある。天候そのものより、この「巡り巡って」の経路のほうが見えにくく、対応も遅れがちだ。
スケイフ教授は最後にこう付け加えた。「今後の予報でこの信号がどう変化するか、注意深く見ていく必要があります」 まだ、序章にすぎない。
まとめ
英気象庁は、2026-27年に発達するエルニーニョ現象が観測史上最強級になるとの見通しを示した。海面水温の上昇幅は平年比3度以上で、通常の1〜2度を大きく超える。インドのモンスーン減少と欧州の荒天という逆方向の影響が同時に起き、2027年は観測史上最も暑い年になる可能性が高い。
出典・参考
- An 'unprecedented' El Niño and its implications for the weather forecast — Met Office(2026年)
- El Nino set to be most intense 'for over a century': UK forecasters — Al Jazeera(2026年8月21日)
- Here's what the strongest-ever El Nino means for UK weather in 2027 — Yahoo News UK
- El Nino: A phenomenon supercharged by climate change — Al Jazeera(2026年9月3日)



