まず締切を確認
今回取り上げる7件は、誰にでも同じように向くプログラムではありません。海外市場を目指す枠、知財戦略を固める枠、自治体と実証する枠では、採択後に得られる成果が異なります。
| 応募締切 | プログラム | 主な対象 | 支援の中心 | 費用・出資の要点 |
|---|---|---|---|---|
| 9月4日 | ERA Global プレシード | 世界を目指すプレシード、全分野 | 顧客課題検証、MVP、米国展開 | 出資付きプログラムの枠組み。条件は個別確認 |
| 9月6日 | JETRO StartX Flagship Entry | シード〜シリーズA | StartX本体への応募支援 | 参加費はJETRO負担、出資なし |
| 9月11日17時 | IPAS 2026年度第2期 | シード・アーリー | 事業と知財の一体設計 | 公的なメンタリング支援 |
| 9月13日 | ASAC第4期・第23期 | 起業予定〜創業3年未満 | MVP、顧客、資金調達 | 施設を無料利用可能。都内要件あり |
| 9月25日 | FLARE AICHI | 18歳以上の女性 | 事業計画、資金調達、コミュニティ | 参加無料。交通・宿泊費などは自己負担 |
| 9月28日正午 | Onlab第32期 | 起業前〜シード、全領域 | 出資、メンタリング、海外展開 | Onlab2号ファンドからの出資が参加条件 |
| 9月30日 | SocialX群馬2026 | グリーン分野の事業者 | 自治体との実証、官民共創 | セミナー参加かアーカイブ視聴が応募条件 |
締切だけを見て7件すべてへ応募する必要はありません。まず「3カ月後に何が進んでいれば成功か」を一文にします。資金調達、最初の顧客、知財、海外展開、自治体での実証のうち、最優先の成果に近いプログラムを選ぶほうが、応募書類の説得力も上がります。
選ぶ基準は3つ
アクセラ選びでは、支援内容だけでなく、採択後に求められる条件まで見ます。特に確認したいのは、ステージ、成果、交換条件の3つです。
| 判断軸 | 確認する質問 | 合いやすいプログラム |
|---|---|---|
| ステージ | アイデア、MVP、初期売上のどこにいるか | 起業前ならASAC・FLARE AICHI、シードならOnlab・StartX |
| 欲しい成果 | 顧客、資金、知財、海外、実証のどれか | 知財はIPAS、米国はERA・StartX、自治体PoCはSocialX |
| 交換条件 | 株式、時間、対面参加、情報公開を受け入れられるか | 出資前提はOnlab、対面条件はASAC・FLARE AICHI・SocialX |
アクセラは無料の講座ではありません。金銭負担がなくても、経営者の時間、毎週の進捗報告、対面参加、写真や活動内容の公開が条件になる場合があります。投資付きなら、バリュエーションや株式比率、優先株の条件も資本政策に影響します。
応募前に、プログラム期間と自社の資金調達日程も重ねてください。投資家との面談が集中する時期に、別のプログラムで協議制限がかかれば、機会損失が生まれます。プログラム名より、採択後のカレンダーを先に見るのが実務的です。
出資条件を見る2枠
| プログラム | 出資の扱い |
|---|---|
| Onlab第32期 | Onlab 2号ファンドからの出資が参加条件 |
| ERA Global | 関連プログラムで出資の可能性。別途審査あり |
Onlab第32期
Open Network Labの第32期は、2026年12月中旬から2027年3月末までの約3カ月です。領域を限定せず、AI、SaaS、フィンテック、D2C、物流、ヘルスケア、エンタメ、ディープテックなどを対象にしています。
支援には、先輩起業家や投資家によるメンタリング、投資家・事業会社が集まるDemo Day、渋谷・代官山・サンフランシスコのワークスペースが含まれます。公式サイトでは、AWS最大2万5,000ドル、OpenAI 3万ドル相当のクレジットも案内されています。
一方、採択時にはOnlab2号ファンドから出資を受け、株式の一部を割り当てる必要があります。金額と条件は会社ごとに決まり、二次面談以降に示されます。プログラム期間中、デジタルガレージ側の事前承諾なしに第三者と出資や業務提携を協議できない条件もあります。
したがって、Onlabは「メンタリングだけ受けたい」チーム向けではありません。資金調達と事業開発を一体で進め、3カ月間の集中環境へ入る意思があるチームに向きます。すでに複数の投資家と協議している場合は、応募前に日程と条件を整理しておく必要があります。
ERA Global
ERA Globalのプレシード枠は、日本発でグローバル市場を目指す全分野のスタートアップが対象です。応募期限は延長後の9月4日。顧客課題の検証、MVP開発、初期販売戦略、ピッチの強化を支援し、オンライン、日本、ニューヨークを組み合わせます。
JETROの案内では、ERA Globalは出資付きプログラムの区分に置かれています。ただし、プレシード参加企業への一律の投資額が約束されているわけではありません。有望な企業は、最大15万ドルの出資可能性があるERAのウィンタープログラムへ進みやすくなるとされていますが、別途審査があります。
応募時には「米国へ行きたい」だけでなく、誰のどの課題を現地で確かめたいかが必要です。国内で顧客像が曖昧なまま海外へ出ても、検証項目が増えるだけです。英語ピッチより先に、顧客仮説を1枚にまとめられるかを確認してください。
海外を目指す非出資枠
JETROの「StartX Flagship Entryコース」は、スタンフォード大学発のアクセラレーターStartXのFlagship Courseへの採択を目指す準備プログラムです。9月から12月までオンラインで実施され、募集は最大7社。分野を問わず、シードからシリーズAが対象です。
応募資料のブラッシュアップや模擬面接が中心で、JETROがプログラム参加費を負担します。GSAPはエクイティフリー型で、出資はありません。ただし、日本国内に所在するスタートアップであること、海外展開や海外資金調達を検討していること、商談可能な英語力があることなどが共通要件です。
| 向いている状態 | 向いていない状態 |
|---|---|
| 英語で顧客や投資家と話せる | 海外展開の担当者が決まっていない |
| 海外展開の意思決定者が参加できる | 国内の顧客課題もまだ定まっていない |
| StartX本体へ挑む理由がある | 海外アクセラの知名度だけに惹かれている |
StartX枠は、一般的な起業講座ではなく、次の選考を突破するためのプログラムです。応募書類では、海外市場の大きさだけでなく、自社がその市場で勝てる理由と、今回の支援で埋めたい不足を切り分ける必要があります。
国内で事業を磨く
| プログラム | 磨くもの |
|---|---|
| IPAS | 事業戦略と知財戦略 |
| ASAC | MVP、顧客獲得、資金調達 |
IPAS 2026年度第2期
IPASは、INPITが創業期のスタートアップへ提供する知財アクセラレーション事業です。ビジネスメンターと知財メンターがチームを組み、2時間のメンタリングを10回程度実施します。第2期の支援期間は2026年12月から2027年5月の予定です。
特許を取ること自体が目的ではありません。顧客価値、製品仕様、収益モデル、模倣対策、資本政策をつなぎ、何を権利化し、何を秘匿するかを決めます。技術やデータが競争力の核なのに、投資家から「どこを守れるのか」と問われて答えられないチームに向きます。
ASAC第4期・第23期
東京都が主催するASACは、プレシードとシードを分けて支援します。プレシードは約3カ月で、顧客ニーズ、ビジネスモデル、MVP、ピッチを扱います。シードは約5カ月で、資本政策、法務、VCメンタリング、採用、PRまで広げます。
対象は、都内で起業を予定する人、または施設利用開始時に創業3年未満で都内に本店登記がある中小企業です。ものづくり、環境エネルギー、ソーシャルなど、事業化に時間がかかりVCが投資しにくい分野も注力対象に挙げています。渋谷区神宮前のコワーキングスペースを使いながら、最初のユーザー獲得まで進めたいチームに合います。
条件特化の2枠
| プログラム | 特化条件 |
|---|---|
| FLARE AICHI | 女性起業家、愛知県とのシナジー |
| SocialX群馬2026 | グリーン分野、自治体との共創 |
FLARE AICHI
FLARE AICHIは、満18歳以上の女性を対象とするアクセラレータープログラムです。起業準備中、創業10年未満、事業承継・第二創業の3段階を対象とし、法人か個人かは問いません。愛知県外からも応募できますが、愛知県とのシナジーが選考で重視されます。
参加費は無料です。2026年10月末から2027年3月にかけて、愛知県内で2回の対面型集中講座、オンラインセミナー、15時間以上を想定する伴走メンタリングを実施します。交通費、宿泊費、食費は自己負担です。女性向けコミュニティだけでなく、事業計画、資金調達、採用、ピッチまで一貫して磨きたい起業家が候補になります。
SocialX群馬2026
SocialX群馬2026は、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブなどのグリーン分野で、群馬県内の自治体と地域課題を解くプログラムです。創業年数は問われず、新しく社会課題へ取り組む既存企業も対象になります。
ファイナリスト約10社には、実証設計のワークショップ、3カ月のメンタリング、自治体や地域企業との面談機会が提供されます。入賞後は自治体とのマッチングと実証へ進みます。応募には9月1日のセミナー参加、またはアーカイブ動画の視聴が必須です。
自治体への営業先紹介ではなく、共創による事業開発が前提です。行政側の課題、実証で測る成果、実証後の導入主体まで描けると、応募内容が具体的になります。
応募前の最終確認
応募フォームを開く前に、次の7項目をチームで確認してください。
- 採択後3〜6カ月で達成したい成果を一文で言える
- 週次メンタリングや対面日程へ経営者が参加できる
- 出資が条件なら、株式比率と既存株主への影響を確認できる
- 他の投資家や事業会社との協議制限を把握している
- 応募資料へ未公開特許や営業秘密を書きすぎていない
- 写真、社名、活動内容の公開条件を受け入れられる
- 宿泊、渡航、通信など自己負担額を見積もっている
応募書類は、プログラムの説明を言い換える場所ではありません。「自社の現在地」「3カ月後の成果」「その間にプログラムの資源をどう使うか」をつなぐものです。ピッチ資料をこれから整える場合は、TechCreateのピッチデック作成ガイドも参考になります。
資金調達を目的に含めるなら、エクイティと融資、補助金の違いも先に整理しておきたいところです。シードからシリーズAまでの資金調達ガイドでは、調達手段ごとの向き不向きをまとめています。
まとめ
- 2026年9月は、海外展開、知財、創業初期、女性起業家、自治体PoCまで目的の異なるプログラムが同時に募集されています。応募先は知名度ではなく、採択後に得たい成果から絞ると判断しやすくなります。
- 出資付きプログラムでは、支援内容と同じ重さで株式、投資条件、第三者との協議制限を見る必要があります。無料のプログラムでも、経営者の時間や対面参加費用は発生します。
- 採択はゴールではありません。プログラムの終了時に顧客、MVP、知財、資金、実証のどれを前へ進めるのかを決め、その不足を埋められる応募先を選ぶことが大切です。



