結果は4-0、しかも無失点 ―― 日本史上初の「1試合4得点」
まずは試合の全体像を、得点の流れで振り返る。
前半に2点、後半に2点。試合を通じて危なげなく、日本は完封でこの一戦を締めた。 記録ずくめの90分だった。鎌田の先制弾は、開始4分。これは日本がワールドカップで挙げた史上最速のゴールだ。そして上田綺世の2得点は、日本人選手がワールドカップの1試合で複数得点を決めた初のケースとなった。 初戦でオランダと2-2の死闘を演じ、第2戦で大量4得点。日本は「強豪と渡り合える」だけでなく「格下を仕留め切れる」ことも証明してみせた。
開始4分、鎌田の「かかと」 ―― 試合の流れを決めた一撃
この試合を決定づけたのは、立ち上がりの4分だった。
左サイドを崩した日本は、中村敬斗が低く速いクロスをゴール前へ。これに走り込んだ鎌田大地が、ほとんど身体を動かさないまま、かかとで合わせてネットを揺らした。クリスタル・パレスでプレーする男の、わずかな反応の速さが生んだ一点だ。 立ち上がりの失点は、引いて守る算段だったチュニジアにとって最悪のシナリオだった。早い時間にリードを失ったことで、新監督エルヴェ・ルナールが描いた「まず守ってカウンター」というプランは、開始早々に崩れ去る。 日本にとっては逆だ。先制したことで相手を前に引き出し、得意とするスペース攻略の土俵に持ち込めた。初戦の同点弾もセットプレーから生まれた鎌田が、ここでも流れの中で口火を切った意味は大きい。
上田綺世という解答 ―― 三笘・南野・久保の穴を埋めた男
この日の主役は、間違いなく上田綺世だった。
フェイエノールトでプレーするストライカーは、31分にペナルティエリアの外から巻くようなミドルで2点目。そして83分には、右からのクロスに高い打点で合わせ、ループ気味のヘディングでこの試合2点目を流し込んだ。強烈なミドルと柔らかいヘッド、まったく異なる2つのフィニッシュで、自身のワールドカップ初ゴールを「2発」に変えた。 今大会の日本は、招集前から主力の離脱に悩まされてきた。三笘薫は負傷で選外、南野拓実もメンバー外。主将格の遠藤航も離脱し、さらに初戦のオランダ戦で久保建英が膝を負傷。このチュニジア戦では、その久保もピッチに立てなかった。 攻撃の核を何人も欠きながら、チームは崩れなかった。むしろ上田という新たな得点源が前面に出て、穴を埋めるどころか上書きしてみせた。海外メディアが「彼の得点だけでなく、周囲との連係と状況判断こそが大きな武器だ」と評したように、上田の価値はゴール数だけでは測れない。
データで見る、一方的な90分 ―― 支配率66%、被xG「0.05」
スコア以上に、内容は一方的だった。数字がそれを物語る。
ボール支配率は66対34。パス本数は266対118と、2倍以上の差がついた。日本がボールを握り、相手を自陣に押し込み続けたことが、数字にそのまま表れている。 そして守備陣の出来は、ほぼ完璧だった。チュニジアが放ったシュートはたった2本。その2本を合わせても、得点期待値(xG)は0.05にすぎない。これは「決定機をほとんど与えなかった」ことを意味する。アフリカ予選を無失点で勝ち上がった堅守のチュニジアを、逆に沈黙させたのは日本のほうだった。 攻めては4点、守っては完封。攻守両面で相手を上回った、文句のつけようがない90分である。
海外メディアはどう報じたか
この快勝は、海外でも好意的に伝えられた。
イギリスの『スカイスポーツ』は、上田綺世を「強烈なロングシュートとループ気味のヘッド、異なる2つのフィニッシュを決めた」と称賛。森保監督の規律あるチーム作りが「アフリカ勢を圧倒した」と評した。 アメリカの『FOXスポーツ』は4つの観点で総括し、「主力の負傷が相次ぐなかでも、選手層の厚さと戦術的な一貫性でパフォーマンスを維持した」と分析。久保の負傷をはじめとする離脱者リストを挙げながら、なお崩れない日本の総合力を高く評価した。 データ分析メディアの論調も同じ方向だった。チュニジアが初戦から監督を代えて臨んだ「再起の一戦」が、いかに不発に終わったかを、支配率とパス数の差で淡々と描き出している。 共通していたのは、「突出したスター不在のチームが、組織力で勝ち切った」という見立てだ。一部メディアは、この戦いぶりから日本を「ダークホース」と位置づけ始めている。
3バックが噛み合った ―― 富安が締めた「無失点」の意味
戦術的にも、この試合は森保ジャパンの一つの完成形だった。
日本は3バックをベースにした布陣(3-4-2-1)で試合に入り、サイドの幅とハーフスペース(中央とサイドの間の領域)を巧みに使った。両サイドで数的優位をつくりながら、外から内へとボールを動かし、チュニジアの守備網を何度も揺さぶった。 チュニジアは後半、選手を入れ替えて前から奪いにかかった。だが、富安健洋が統率する最終ラインは落ち着いていた。相手のプレスを意に介さず、後方から的確にボールをつなぎ、最後まで隙を見せなかった。被シュートをわずか2本に抑えた背景には、この安定した後方の組み立てがある。 試合後、森保監督はこう語っている。「やりたいことをしっかり準備し、積極的にプレーできた。多くの日本のサポーターが大きな声で後押ししてくれた。その支えは大きな力になった」。狙いを明確に持ち、それを90分間ぶれずに遂行する。守備の破綻から監督交代に追い込まれたチュニジアとは、チームとしての成熟度がそのまま対照をなした一戦だった。
グループF最新情勢 ―― 突破は目前、最終節スウェーデン戦へ
この勝利で、日本はグループ突破に大きく近づいた。
日本は勝点を4に伸ばし、オランダと並んでグループの上位に立った。両者は得失点差でも並んだが、総得点でわずかに上回るオランダが首位、日本は2位につけている。一方、2連敗で計9失点を喫したチュニジアは、この時点で敗退が決まった。 今大会は、各グループ上位2チームに加え、3位チームのうち成績上位8チームも決勝トーナメント(新設のラウンド32)へ進める。勝点4で2位につける日本は、すでに突破がかなり現実的な位置にいる。 最終節の相手は、初戦でチュニジアを5-1と粉砕したスウェーデンだ。直接対決でこの一戦を引き分け以上で乗り切れば、自力でのグループ突破が見えてくる。引いて守る相手を4点で崩した日本が、次は前から来る強敵をどういなすのか。第1節とはまた違う、力勝負の90分が待っている。
まとめ ―― 「強いチーム」の条件を、満たしつつある
オランダと互角に渡り合い、チュニジアを4-0で完封する。タイプの異なる2試合を、どちらも結果を出して終えた。 スターを欠いても、組織で勝つ。引いた相手も、前に出る相手も、それぞれのやり方で攻略する。強いチームの条件を、いまの日本は一つずつ満たしつつある。 最終節のスウェーデン戦、そしてその先のトーナメント。この夏の日本代表は、どこまで景色を変えていくのだろうか。あなたは、次の90分をどこで見届けるだろうか。
出典・参考
- FIFA公式 — Tunisia v Japan 0-4 Result, Stats & Highlights, FIFA World Cup 2026
- Sky Sports — World Cup 2026: Tunisia 0-4 Japan, Ayase Ueda scores twice
- FOX Sports — 4 Takeaways From Japan's Superb Win Over Tunisia
- ESPN — Tunisia 0-4 Japan, Final Score / Game Analysis
- Opta Analyst — Tunisia 0-4 Japan Stats: Ueda at the Double
- NHKニュース・テレ東スポーツ・サッカーキング — 日本4-0チュニジア 詳報
- Wikipedia — Tunisia v Japan (2026 FIFA World Cup)



