「7割以上が食事を作れない国」
WFPが今回行った調査は、全国の2,200を超える世帯が対象だった。 調査員が各地を訪問し、食料の調達方法と栄養状態を確認した。
74%という数字は、前回の調査から8ポイント上昇している[1]。 内戦が膠着状態に入ってもなお、状況は悪化し続けていることを示している。
特に深刻なのは、タイズ、マアリブ、ハドラマウトの各州だ。 ここでは調査世帯の9割近くが食料不足を訴えた。
農村部では農地が爆撃で破壊され、都市部では輸送路が機能していない。 食料が作れない地域と届けられない地域が、同時に存在している。

ホリングワースが言った言葉
「危機が国境を越える」という表現は、単なる警告ではない。 WFPのホリングワースは、それを裏付けるデータとともに述べた[2]。
イエメンから外へ出た人々が、サウジアラビア、オマーン、エチオピアに流入している。 そうした人々がたどり着いた先でも、食料や医療の需要が急増しているという。
2023年以降、イエメンから隣国へ移動した人の数は累計で60万人を超えた。 これは大阪市の人口とほぼ同じ規模だ。
ホリングワースは「援助が届かなければ、次の段階へと進む」と述べた。 「次の段階」という言葉は、飢餓から死亡率の上昇を意味する。
なぜここまで悪化したのか
イエメンの内戦は2014年に始まった。 フーシ派がサナアを制圧し、政府軍と親サウジアラビアの連合軍との戦いになった。
2022年に停戦が成立したが、完全な和平には至らなかった。 今年に入ってからも散発的な戦闘が続き、インフラへの攻撃が止まっていない[3]。
農業の崩壊、物価の上昇、外貨の枯渇という三重の打撃が重なっている。 水産物や農産物の輸出も止まり、外貨を稼ぐ手立てがほぼなくなった。
「普通の商店でパンを買うにも、今は割に合わない値段になっている」と南部の住民はAl Jazeeraに語った[3]。
物価が上昇しても、収入は追いつかない。 そのギャップが、74%という数字として表れている。
「国境の外」という警告の意味
WFPが「国境を越える」と表現したのは、初めてのことではない。 だが今回のデータは、その現実が加速していることを示している。
イエメンの食料不足は、紅海航路を通じた輸送コストにも影響を与えている[4]。 フーシ派による船舶攻撃が続く中で、保険料と迂回コストが増している。
つまり、イエメンの危機は世界の海運コストを押し上げる一因にもなっている。 日本もその影響から無縁ではない。
2026年の国連安全保障理事会は、イエメン問題を少なくとも3回取り上げた。 停戦の完全履行を求める決議は、常任理事国の反対で通らなかった。
その間も、74%という数字は上がり続けている。
援助が届かない仕組み
WFPへの拠出金は、今年に入って大幅に減少した。 主要ドナー国が国内問題を優先し、援助予算を削減したためだ[1]。
現在WFPがイエメンで必要としている資金の40%しか集まっていない。 残りの60%が埋まらない限り、援助の規模は縮小するしかない。
「支援できる量が減れば、飢えて死ぬ人が増える」という計算式は単純だ。 それでも資金は集まっていない。
国際機関が最低限の活動を続けるために必要な額は、年間2億ドルとされる。 日本円でおよそ290億円、東京ドーム1棟分のコストを少し下回る額だ。
「子どもが最初に壊れる」
食料不足が長引くと、最初に影響が出るのは子どもだ。 5歳未満の子の4割以上が中程度以上の栄養不良にあるという報告がある。
栄養不良の子どもは感染症に弱くなり、成長や認知発達にも影響が出る。 戦争が終わった後も、その影響は10年以上続くとされる。
調査したWFPの担当者は「今の子どもが大人になるころ、何を背負うか」と記した[2]。 数字に表れにくい損失が、この国では積み重なっている。
学校に通えない子どもの数も急増している。 教師が逃げ、建物が破壊されるだけでなく、親が食費を優先するために子どもを働かせる。
食料の問題は、教育と将来の問題にもつながっている。 74%という数字の先に、何年分もの人生がある。
ユニセフによると、重度の急性栄養不良の子どもは今年40万人を超えた[1]。 この数字は2年前の2倍近い。
支援が届かない理由は資金だけではない。 フーシ派が支配する地域では、支援物資の搬入に許可が必要で、却下が続いている。
許可が下りないまま子どもが死ぬ。 それが「援助できない仕組み」の正体だ。
戦争が終わったとしても、栄養不良の影響は数年単位で続く。 子どもの問題は、今この瞬間だけの問題ではない。
まとめ
74%という数字は、統計ではなく人の話だ。 10世帯のうち7つが、今日の夕食をどうするか迷いながら朝を迎えている。
「国境を越える」という言葉は来年の話ではない。 ホリングワースはそう言った。






