VPNとは何か
VPNは、複数の利用者が共有する通信路の上に、論理的に分離されたネットワークをつくる仕組みです。共有する通信路には、インターネットや通信事業者のネットワークなどがあります。JPNICはVPNを、公衆ネットワーク上でつくられる仮想的な専用ネットワークの総称と説明しています。
編集部のたとえでいえば、一般の道路の中に、許可された車だけが中を通れる覆い付きの通路を設けるイメージです。実際に専用のケーブルを敷くわけではありません。共有の通信設備を使いながら、データを別の形式で包み、必要に応じて暗号化し、接続相手を確かめます。
| 言葉 | 役割 | たとえ |
|---|---|---|
| 仮想ネットワーク | 共有設備の上に論理的な通信範囲をつくる | 一般道上の専用通路 |
| トンネリング | 元のデータを別のデータで包んで運ぶ | 荷物を専用コンテナへ入れる |
| 暗号化 | 途中で見られても内容を読みにくくする | 鍵付きの箱に入れる |
| 認証 | 接続しようとする人や機器を確認する | 通行証を確かめる |
すべてのVPNが同じ方式で動くわけではありません。通信事業者が利用者ごとに経路を分けるサービスもあれば、インターネット上の通信を暗号化する方式もあります。「VPNだから必ず同じ強度で暗号化される」とは限らず、方式と設定の確認が必要です。
通信の仕組み
自宅のパソコンから会社のネットワークへ接続するリモートアクセスVPNを例にすると、主な流れは次のようになります。
| 段階 | 起きること | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 1. 接続要求 | VPNアプリなどが会社側のVPN装置へ接続する | 正しい接続先か |
| 2. 認証 | ID、パスワード、証明書、多要素認証などで本人や端末を確認する | 認証情報が守られているか |
| 3. トンネル確立 | 両端が通信方式や暗号鍵を決める | 古い方式を使っていないか |
| 4. データ送信 | データを包み、暗号化してインターネット上を送る | どの通信がVPNを通るか |
| 5. 復号と転送 | 会社側で元のデータへ戻し、社内システムなどへ渡す | VPN出口の先も安全か |
ここで重要なのは、VPNで保護される「区間」です。端末と会社のVPN装置の間はVPNで暗号化されても、装置から接続先サービスまでの通信は別です。接続先がHTTPSに対応していれば、その区間はHTTPSによって保護されます。VPNとHTTPSは競合するものではなく、守る単位の異なる技術です。
また、VPNにはすべての通信を通す構成と、社内向けなど一部の通信だけを通す「スプリットトンネル」の構成があります。後者は通信負荷を抑えられますが、どの通信がどこを通るかを管理する必要があります。利用者が設定を推測して変えるのではなく、組織の指示に従うことが基本です。
VPNの主な種類
VPNは「誰と誰をつなぐか」と「どのネットワークを使うか」で整理すると理解しやすくなります。
| 種類 | つなぐ対象 | 主な用途 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| リモートアクセスVPN | 個人の端末と組織のネットワーク | 在宅勤務、出張先からの接続 | PCやスマホにVPN機能やアプリを用意する |
| 拠点間VPN | オフィスとオフィス | 本社と支社、店舗と本部の接続 | ゲートウェイ同士を継続的につなぐ |
| インターネットVPN | 端末・拠点間 | 共有インターネット上の通信保護 | 暗号化と認証を組み合わせることが多い |
| IP-VPNなど | 複数拠点 | 通信事業者の閉域サービス | 事業者網内で利用者の通信を論理的に分離する |
| 個人向けVPNサービス | 端末と事業者のVPNサーバー | 外出先での通信経路変更など | VPN事業者が通信の出口になる |
会社VPNと個人向けVPNサービスは、目的が同じではありません。会社VPNは、社内限定のシステムへ認証済みの端末を接続する目的で使われます。個人向けサービスは、端末から事業者のVPNサーバーまでを保護し、そこを通信の出口にするものが中心です。
スマートフォンの「VPN」設定も、VPNそのものを1種類だけ示す名前ではありません。会社や学校が指定した構成情報を登録する場合も、VPNサービスのアプリが設定を作成する場合もあります。目的と提供元を確認せず、表示されたVPNを一律に有効化するものではありません。
VPNで守れる範囲
VPNの価値は、通信経路を論理的に分離し、暗号化や認証を加えられることです。一方、端末や利用者の行動まで自動的に安全にする機能ではありません。
| VPNが助けること | VPNだけでは防げないこと |
|---|---|
| 端末とVPN装置の間の盗聴や改ざんリスクを下げる | 偽サイトへ自分でパスワードを入力すること |
| 社外から社内限定のネットワークへ接続する | 端末に入ったマルウェアの動作 |
| 拠点同士をひとつのネットワークのようにつなぐ | VPN接続後の過剰なアクセス権限 |
| 接続元のIPアドレスをVPN出口のものに変える | VPN事業者や接続先による記録をゼロにすること |
| 公衆網上の一部区間を暗号化する | 接続先サービス自体からの情報漏えい |
VPNへ接続した端末がマルウェアに感染していれば、その端末を入口に社内ネットワークへ攻撃が広がる可能性があります。JPNICも、VPNで接続した拠点同士が同一ネットワークとして扱われるため、安全性への配慮が必要だと説明しています。
「VPNを使うと匿名になる」という表現にも注意が必要です。接続先から見えるIPアドレスはVPNサーバーのものへ変わる場合がありますが、ログイン情報、Cookie、端末情報など別の識別手段は残ります。VPN事業者には接続元や通信に関する情報が見える可能性もあります。匿名性を保証する言葉ではありません。
利用時の注意点
VPNは設定と運用を含めてはじめて機能します。利用者側で確認したい基本事項は次のとおりです。
- 会社や学校では、指定されたVPNアプリと接続手順だけを使う
- 多要素認証が提供されている場合は有効にする
- OS、VPNアプリ、ルーターを更新し、既知の脆弱性を残さない
- 無料か有料かだけでなく、運営者、利用規約、ログ方針、問い合わせ先を確認する
- 常時接続が必要か、業務中だけ接続するかを管理者へ確認する
- 接続後もHTTPS、端末の画面ロック、フィッシング対策を続ける
通信速度が下がる場合があるのは、データを暗号化し、VPNサーバーなどを経由するためです。低下の程度は、距離、回線混雑、暗号方式、端末性能、VPNサーバーの負荷などで変わります。「VPNは必ず遅い」「有料なら必ず速い」と単純には決められません。
知らないVPNアプリを入れることにもリスクがあります。通信の出口を任せる相手になるため、広告の表示や価格だけで選ばず、提供主体と情報の扱いを確認する必要があります。とくに会社の端末では、個人の判断で別のVPNを併用しないことが重要です。
接続できたかどうかは、端末のVPN表示だけで判断しない場面もあります。会社VPNなら、指定された社内ページへ到達できるか、管理者が案内する確認方法を使います。個人向けサービスでは、接続先の国名表示だけで安全性を判断せず、意図した通信がVPNを通っているか、切断時に通常回線へ戻る設定かを確認します。VPN接続中でもブラウザの警告やOSの警告を無視してはいけません。接続に失敗した場合は、設定を無断で変えず、提供元や管理者の案内を確認します。
よくある質問
次の5つは、VPNについて検索されやすい疑問です。
- 略称とスマートフォンでの必要性
- フリーWi-Fiで守れる範囲
- HTTPSとの違いと切断時の動作
VPNは何の略ですか
Virtual Private Networkの略です。既存ネットワーク上につくる仮想的な専用ネットワークを指します。
VPNはスマホにも必要ですか
用途によります。会社のシステムへ接続するなど、利用先から指定された場合に使います。誰にでも常時必要な機能ではありません。
VPNを使えばフリーWi-Fiは安全ですか
端末とVPN装置の間を保護する助けになりますが、偽のWi-Fi、詐欺サイト、端末の感染まで防ぐわけではありません。
VPNとHTTPSの違いは何ですか
VPNは端末やネットワーク間に仮想的な通信路をつくり、HTTPSはブラウザなどとWebサイト間のHTTP通信を暗号化・認証します。
VPNを切るとどうなりますか
VPN経由でしか使えない社内システムには接続できなくなります。通常のインターネット通信へ戻るかどうかは設定によります。
関連するIT用語
VPNはネットワークの複数の技術を組み合わせて成り立ちます。
- IPアドレスとは:通信相手を識別する番号の役割
- HTTP・HTTPSとは:Web通信を暗号化する範囲と仕組み
- DNS・ドメインとは:Web上の名前をIPアドレスへ対応させる仕組み
- クラウドとは:VPNの接続先にもなる遠隔のコンピューター資源
まとめ
- VPNは、共有ネットワーク上に仮想的な専用ネットワークをつくり、トンネリング、暗号化、認証などで通信を保護する技術です。
- 会社VPN、拠点間VPN、個人向けVPNサービスは目的と保護区間が異なるため、「VPN」という名前だけで同じものだと考えないことが大切です。
- VPNは安全性を高めますが、詐欺サイト、マルウェア、過剰な権限までは防ぎません。OS更新や多要素認証、HTTPSと組み合わせて使う必要があります。



