Google DeepMindを去った2人の巨人
Noam Shazeerは2017年、現代AIの礎となる論文「Attention Is All You Need」を共著した人物だ。 この論文で提唱されたTransformerアーキテクチャは、ChatGPTやGeminiを含む主要なAIモデルすべての基盤となっている。
Shazeerは2021年にGoogleを退社してCharacter.AIを共同創業したが、2024年8月にGoogleが27億ドルを投じてCharacter.AIの技術ライセンスを取得する形で事実上の「買い戻し」を実現し、DeepMindに復帰した。 しかしその復帰からわずか2年足らずで、今度はOpenAIへの移籍を選択した。
OpenAI CEOのSam Altmanは6月18日、Xへの投稿で「Noamは私がOpenAI創設当初から最も一緒に働きたいと思っていた人物だ」とコメントしている。
Shazeerと入れ替わるように翌19日に発表されたのが、John JumperのAnthropicへの移籍だ。 JumperはAlphaFold2の開発を率い、アミノ酸配列からタンパク質の立体構造を予測するこのシステムが生命科学に与えた影響が評価され、2024年のノーベル化学賞をDeepMind CEO・Demis Hassabisと共同受賞した。
AlphaFoldは190か国以上の200万人を超える科学者に活用され、ワクチン開発、がん治療、薬剤耐性菌の研究を加速させてきた。 Jumperは1985年生まれで、70年以上ぶりに最年少記録を更新した化学ノーベル賞受賞者でもある。 Jumperは「少し休んでから」Anthropicに参画すると自身のXへの投稿で述べた。
人材流出が示すGoogleの苦境
Googleは人材引き留めに巨額の資金を投じてきたが、今回の流出はその限界を示している。
2024年のShazeer呼び戻しは27億ドル規模の投資だったにもかかわらず、2年足らずで再び失うことになった。 ノーベル賞受賞者のJumperも「9年近く勤めた」DeepMindを離れることを選んだ。 経営陣との公開コメントを見る限り、Jumperの離脱に感情的な軋轢があったわけではないが、才能が次々と競合に流れるという事実は重い。
Anthropicは2026年4月にCoefficient Bioを4億ドルで買収し、生命科学分野への進出を本格化させている。 Jumperの採用はその戦略的布石とみられており、AlphaFoldで培った構造生物学の知見がAnthropicのAI創薬プロジェクトに活かされる可能性がある。
覇権争いの構図が変わる
OpenAIはChatGPTの市場シェアが初めて50%を下回ったと伝えられる中でのShazeer獲得となった。 Geminiを直接リードしていた人物を競合他社に引き入れることで、技術競争の主導権を取り戻す狙いがあるとみられる。
Anthropicは評価額が9,650億ドルに達したとも報じられており、今回のJumper獲得はその勢いを印象づける動きだ。 Google DeepMindは依然として世界トップクラスの研究組織だが、ShazeerとJumperという相次ぐ離脱は組織の求心力に疑問符を投げかけている。
AI研究の第一線に立つ人材をめぐる争いは、資本や名声だけでは語れない次元に突入しつつある。
ソース:
- Google Gemini co-lead Noam Shazeer leaves for OpenAI — CNBC(2026年6月18日)
- Nobel laureate John Jumper is leaving DeepMind for rival Anthropic — TechCrunch(2026年6月20日)
- John Jumper Leaves Google DeepMind for Anthropic — The Next Web(2026年6月19日)
- Noam Shazeer Leaves Google for OpenAI After $2.7 Billion Recruitment Deal — Memeburn(2026年6月18日)