ミッションの全記録
Artemis IIは4月1日午後6時35分、フロリダ州ケネディ宇宙センターの39B発射台から打ち上げられた。使用されたのはNASA史上最大の打ち上げロケット「SLS(Space Launch System)」だ。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 打ち上げ日時 | 2026年4月1日 18:35 EDT |
| 着水日時 | 2026年4月10日 20:07 EDT |
| ミッション期間 | 約9日間(10日間弱) |
| 総飛行距離 | 695,081マイル(約112万km) |
| 月面最接近距離 | 4,070マイル(約6,550km) |
| 使用ロケット | SLS Block 1 |
| 宇宙船 | オリオン |
9日間のミッションで、オリオンは月の裏側を通過し、地球に帰還した。月面への最接近は約6,550km。地球から月までの距離(約38万km)の100分の1以下まで迫った。
4人のクルー
Artemis IIのクルーは4人。NASAからコマンダーのリード・ワイズマン、パイロットのビクター・グローバー、ミッションスペシャリストのクリスティーナ・コック。そしてカナダ宇宙庁のジェレミー・ハンセンが参加した。
グローバーは月周回飛行を行った初のアフリカ系アメリカ人となり、コックは月周回飛行を行った初の女性宇宙飛行士となった。ハンセンはアメリカ人以外で初めて月の軌道に到達した人物だ。
4月11日、ヒューストンのジョンソン宇宙センターに帰還したクルーは家族と再会。NASAは「記録的な月旅行者たちを地球に迎える」と題したプレスリリースを発表した。
なぜ52年かかったのか
1972年のアポロ17号以来、人類が月の近くに行くことすらなかった。その理由は単純ではない。
冷戦の終結でソ連との宇宙開発競争のモチベーションが失われた。NASAの予算はピーク時(1966年、連邦予算の4.4%)から大幅に削減され、現在は0.5%以下だ。スペースシャトル計画とISS(国際宇宙ステーション)に資源が集中したことも、月への再訪を遠ざけた。
アルテミス計画が本格始動したのは2017年。当初は2024年に有人月面着陸を目指していたが、技術的課題と予算超過で繰り返し延期された。Artemis I(無人試験飛行)が2022年に成功し、ようやくArtemis IIへの道が開けた。
テクノロジーの進化
アポロ時代と比べて、テクノロジーは劇的に進化している。
| 比較項目 | アポロ(1972年) | Artemis II(2026年) |
|---|---|---|
| コンピュータ性能 | 74KB RAM | 数百倍以上 |
| 通信遅延 | 音声のみ、数秒遅延 | HD映像のリアルタイム中継 |
| ナビゲーション | 地上管制に依存 | 自律航法システム搭載 |
| 耐熱シールド | アブレーション式 | 新型AVCOAT(再設計) |
| ミッション管理 | 紙ベースの手順書 | デジタル・フライトデッキ |
オリオンの耐熱シールドは、大気圏再突入時に摂氏2,760度に耐える設計だ。月からの帰還速度は秒速11km(マッハ32相当)。この速度で大気圏に突入する有人宇宙船は、アポロ以来初めてだった。
次のステップ:Artemis III
Artemis IIの成功は通過点にすぎない。次のArtemis IIIでは、いよいよ人類が月面に降り立つ。
月面着陸にはSpaceXのStarship HLSが使用される予定だ。宇宙飛行士はオリオンからStarshipに移乗し、月の南極付近に着陸する。月の南極には水の氷が存在するとされ、将来の月面基地建設の候補地になっている。
52年のブランクを経て、人類は再び月を目指している。今回は「行って帰る」だけでなく、「住む」ことを視野に入れている。Artemis IIの成功は、その最初のマイルストーンだ。宇宙開発の次の50年は、前の50年とはまったく違うものになるだろう。
