Googleは2026年3月25日、音楽生成AIの新モデル「Lyria 3 Pro」を発表した。Google DeepMindが開発したこのモデルは、同年2月にリリースされた前モデル「Lyria 3」(最大30秒)から大幅に強化され、最大3分間の楽曲をエンドツーエンドで生成できる。Geminiアプリ、Google Vids、Vertex AI、Gemini APIなど6つのプラットフォームで展開される。
最大3分・構造指定に対応した「構造的認識」エンジン
Lyria 3 Proの核心的な新機能は「構造的認識(structural awareness)」と呼ばれる能力だ。ユーザーはプロンプトで「イントロ→Aメロ→サビ→ブリッジ」といった楽曲構造を具体的に指定でき、ボーカルと歌詞を含む完成形のトラックを出力する。前バージョンの30秒制限を大幅に突破し、生成時間は最大6倍に拡大した。
利用できるプラットフォームは以下の6種類だ。
- Geminiアプリ(有料プラン限定)
- Google Vids(AI動画制作ツール)
- ProducerAI
- Vertex AI(エンタープライズ・ゲーム開発向け、パブリックプレビュー)
- Gemini API
- Google AI Studio
Geminiアプリでの1日あたり生成上限は、AI Plusプランで10トラック、Proプランで20トラック、Ultraプランで50トラックとなっている。エンタープライズ向けのVertex AIは現在パブリックプレビュー中だ。
Epidemic Soundへの正面対決——クリエイター向けBGM市場を狙う
GoogleはLyria 3 Proを「Epidemic SoundなどのロイヤリティフリーBGMサービスへの対抗馬」と明確に位置づけている。Vlog、ポッドキャスト、SNS動画向けのカスタムBGMを即時生成できる環境を目指しており、クリエイターがゼロから著作権フリーの楽曲を作れる点が最大の訴求ポイントだ。
| 利用形態 | プラットフォーム | 1日の上限 |
|---|---|---|
| AI Plusユーザー | Geminiアプリ | 10トラック |
| Proユーザー | Geminiアプリ | 20トラック |
| Ultraユーザー | Geminiアプリ | 50トラック |
| エンタープライズ | Vertex AI | パブリックプレビュー |
| デベロッパー | Gemini API / AI Studio | API経由 |
競合には音楽生成AIの先行プレイヤーであるSuno、Udio、Adobe Fireflyなどが名を連ねる。GoogleはGeminiエコシステムへの深い統合とエンタープライズ向けVertex AI連携を武器に差別化を図る戦略だ。
SynthIDウォーターマークと著作権管理の課題
Lyria 3 Proで生成したすべてのトラックには、Google DeepMindが開発した「SynthID」ウォーターマークが自動的に埋め込まれる。AI生成コンテンツを識別するための技術的手段で、楽曲の著作権帰属を追跡可能にする仕組みだ。ユーザーがプロンプトにアーティスト名を指定しても、そのアーティストの「広義のインスピレーション」を参照するにとどまり、直接的な模倣を防ぐフィルターが作動する。
学習データについてGoogleは、「YouTubeの利用規約およびパートナー契約に基づく許諾データ」を使用したと説明している。ただし、Billboardは以前、Googleが過去のモデル開発時にライセンス締結前に著作権保護楽曲を学習データとして使用していた可能性があると報じており、音楽業界との緊張関係は完全には解消されていない。
Lyria 3のリリースからわずか約1か月でProバージョンが登場したという速度感は、AI音楽生成ツール市場の競争激化を如実に示している。GoogleがGeminiエコシステム全体にこの技術を組み込む戦略を採る中、クリエイターツールとしての音楽生成AIは本格的な実用フェーズに突入しつつある。
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