OpenAIは2026年3月25日、動画生成AIサービス「Sora」の提供を正式終了した。一般公開からわずか6ヶ月での撤退となり、Walt Disney Companyとの10億ドル規模のコラボレーション契約も同時に失効した。次世代モデル「Spud」の開発加速が直接の理由だ。
Soraが抱えていた構造的問題
Soraは2025年秋に一般公開された動画生成モデルで、テキストから高品質な動画を生成できる点が注目を集めた。しかし動画生成はテキスト系モデルと比較して膨大なGPUリソースを消費する構造的な問題を抱えていた。
OpenAI社内では「Soraが使っているコンピュートを別の場所に向けるべきだ」という議論が続いていた。AnthropicがClaudeシリーズのエンタープライズ向けエージェントAIで顧客を着実に獲得しているなか、動画生成という非コア領域への投資継続が問われていた格好だ。
ディズニーとの契約は創作コンテンツ制作へのSora活用を想定したものだったが、OpenAI側から契約解消を申し入れた。ディズニーは「OpenAIの動画生成事業からの撤退を尊重する」とコメントしている。
次世代モデル「Spud」——数週間以内に公開予定
OpenAIのCEO・サム・アルトマンは社内スタッフ向けメッセージで、次期主要モデル「Spud」のプレトレーニングが完了したことを明かした。「数週間後にはとても強力なモデルが使える状態になる。経済を本当に加速させられるものだ」とアルトマンは述べている。
Spudの位置づけはGPT-5.5またはGPT-6相当と見られている。単体モデルとしてのリリースにとどまらず、ChatGPT・コーディングエージェント「Codex」・ブラウザツール「Atlas」を統合した新しいデスクトップ「スーパーアプリ」の基盤になるとされる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| コードネーム | Spud |
| 公開予定 | 2026年4月中(数週間以内) |
| 連携製品 | ChatGPT、Codex、Atlas |
| 位置づけ | GPT-5.5またはGPT-6相当 |
アルトマン、安全部門の監督を離れ資金調達に専念
今回の発表と同時期に、アルトマンが安全・セキュリティチームの直接監督責任を手放したことも明らかになった。今後は資金調達とデータセンター構築に集中する意向だ。
OpenAIは直近でさらに100億ドルの追加資金調達を完了しており、IPO(新規株式公開)も視野に入れているとされる。
Soraの廃止によって解放されたGPUリソースをSpudに全投入するという判断は、競争が激化するLLM市場でOpenAIがAnthropicやGoogleへの対抗を最優先にしていることを示している。ChatGPTとコーディング・ブラウジングを融合した「スーパーアプリ」構想が現実のものになるか——## 動画生成AI市場のその後——Soraなき世界
Soraの撤退はOpenAIにとっての戦略的集中だが、動画生成AI市場自体は急速に成長している。Runway Gen-4は2026年2月にリリースされ、映画品質の動画を数分で生成できるとして映像クリエイターの間で急速に普及した。Google DeepMindのVeo 2は、YouTube Shortsとの統合により動画マーケティング市場を開拓している。
| 動画生成AIサービス | 開発元 | 現状 |
|---|---|---|
| Sora | OpenAI | 2026年3月に提供終了 |
| Runway Gen-4 | Runway | 映画・広告制作で急成長中 |
| Veo 2 | Google DeepMind | YouTube統合で差別化 |
| Kling | 快手(中国) | アジア市場で存在感 |
| Pika 2.0 | Pika Labs | 個人クリエイター向け |
Soraの撤退が意味するのは、「動画生成AIは儲からない」ということではない。「OpenAIにとってはLLMとエージェントAIの方が優先度が高い」という経営判断だ。動画生成はRunwayやGoogleに任せ、自社はChatGPTとSpudを軸にした「AIスーパーアプリ」に全リソースを集中する——この選択と集中の判断が正解かどうかは、Spudのリリース後に明らかになる。
アルトマンの安全部門離脱が意味するもの
アルトマンが安全チームの監督を離れた動きも注目に値する。2024年にOpenAIの安全担当役員だったJan Leike(ヤン・ライケ)がAnthropicへ移籍したことが大きな波紋を呼んだ。今回のアルトマンの判断は、安全性よりも事業成長と資金調達を優先する姿勢として、AI安全性の研究者コミュニティから批判を受けている。
一方で、IPOを控えた企業として、CEOが資金調達とインフラ構築に専念すること自体は合理的ともいえる。OpenAIの企業評価額は3,000億ドルを超えており、上場が実現すればAI企業として史上最大のIPOとなる可能性がある。OpenAIの従業員の間でも、安全チームの縮小を懸念する声が上がっている。Glassdoorの匿名レビューでは「安全性よりもスピードが優先される文化に変わった」との投稿が複数確認されている。安全性と成長のバランスをどう取るか——この問いは、AI業界全体に突きつけられている。
Spudの実力が明らかになる数週間後が、OpenAIの競争力を測る試金石となる。
ソース: