Claude Codeをインストールした。ターミナルで claude と打てばAIが答えてくれる。だが、多くの開発者がここで立ち止まる。「で、何から設定すればいいの?」と。
Claude Codeの真価は、素のまま使うことにはない。CLAUDE.mdによるプロジェクト知識の蓄積、Hooksによる自動化、Skillsによるワークフロー再利用——これらを正しく設定して初めて、開発効率は劇的に変わる。
本記事では、Claude Code開発者Boris Cherny自身のワークフローや、Wantedly・DMMなど日本企業の導入事例をもとに、最初にやるべき設定を体系的に解説する。
※本記事で紹介するX投稿は、すべてX社が公式に提供する埋め込み機能(oEmbed API)を使用して表示しています。
Claude Codeとは何か——30秒で理解する
Claude Codeは、Anthropicが提供するCLIベースのAIコーディングアシスタントだ。ターミナルから直接呼び出し、コードベースの理解、ファイル編集、コマンド実行、Git操作までを会話形式で行える。
Web版のClaudeとの最大の違いは、ローカルファイルシステムへの直接アクセスにある。プロジェクトのコード全体を読み、理解した上でコードを書く。だからこそ、事前の設定が出力品質を左右する。
| 特徴 | Web版Claude | Claude Code |
|---|---|---|
| 実行環境 | ブラウザ | ターミナル (CLI) |
| ファイルアクセス | アップロード必要 | ローカル直接読み書き |
| コマンド実行 | 不可 | シェルコマンド実行可 |
| Git操作 | 不可 | コミット・PR作成まで |
| カスタマイズ | プロンプトのみ | CLAUDE.md・Hooks・Skills |
root株式会社CEOの西村和則氏(@nishimuu)は、Web版とCLI版の体験差についてXで次のように述べている。
CLAUDE.md——プロジェクトの「取扱説明書」を書く
Claude Codeで最初にやるべきことは、CLAUDE.mdファイルの作成だ。これはプロジェクトのルート直下に置くMarkdownファイルで、Claude Codeが毎回のセッション開始時に自動的に読み込む。
3層構成を理解する
CLAUDE.mdには3つのレイヤーがある。
| レイヤー | 配置場所 | 用途 |
|---|---|---|
| グローバル | ~/.claude/CLAUDE.md | 全プロジェクト共通の好み・規約 |
| プロジェクト | プロジェクトルート | リポジトリ固有のルール・構造 |
| ローカル | .claude/CLAUDE.md | 個人的な設定(gitignore推奨) |
プロジェクト層のCLAUDE.mdはGitにコミットしてチーム全員で共有するのが推奨される。Anthropic社内でも各チームがCLAUDE.mdをGitで管理し、PRごとに改善を重ねている。
何を書くべきか
Claude Code開発者のBoris Chernyは、CLAUDE.mdを約2,500トークン以内に収めることを推奨している。記載すべき項目は以下の通りだ。
- ビルド・テストコマンド:
pnpm dev,pnpm test,pnpm lintなど - コーディング規約: 命名規則、インポートスタイル、型定義方針
- アーキテクチャ概要: ディレクトリ構成、主要ファイルの役割
- やってはいけないこと: 過去の失敗から学んだアンチパターン
- レビューチェックリスト: PRに出す前の確認事項
重要なのは、各行の必要性を問うことだ。Boris自身の言葉を借りれば、「その行を消してもClaudeがミスをしないなら、消すべきだ」。膨大なCLAUDE.mdはかえってルールが無視される原因になる。
Wantedlyのエンジニアチームも、この3層構成を活用した社内標準の整備事例を公開している。
/init で雛形を生成する
プロジェクトで初めてCLAUDE.mdを作る場合、/init コマンドが便利だ。Claude Codeがコードベースを分析し、ビルドコマンド・ディレクトリ構成・主要な依存関係を自動で検出してCLAUDE.mdの雛形を生成する。
# プロジェクトのルートで実行
claude
> /init
生成された雛形をベースに、チーム固有のルールやアンチパターンを追記していく。ミスが起きるたびにルールを追加する「自己学習型」運用が最も効果的だ。
Hooks——「必ず実行されるルール」を仕込む
CLAUDE.mdに書いたルールは、あくまで「お願い」に過ぎない。長いセッションの中でClaudeが忘れてしまうこともある。これに対し、Hooksは毎回必ず発火する確定的なシェルコマンドだ。
Hooksの基本構造
Hooksは .claude/settings.json に設定する。17のライフサイクルポイントで発火し、3つの制御レベルがある。
| 制御レベル | 終了コード | 動作 |
|---|---|---|
| 許可 (permit) | 0 | そのまま続行 |
| 警告 (warn) | — | 警告を表示して続行 |
| ブロック (block) | 2 | アクションを中止 |
実践的なHook例
① ファイル保存後にPrettierを自動実行
{
"hooks": {
"PostToolUse": [
{
"matcher": "Write|Edit",
"command": "npx prettier --write $CLAUDE_FILE_PATH"
}
]
}
}
② force-pushをブロック
{
"hooks": {
"PreToolUse": [
{
"matcher": "Bash",
"command": "echo $CLAUDE_TOOL_INPUT | grep -q 'push.*--force' && exit 2 || exit 0"
}
]
}
}
③ テスト自動実行(コミット前)
PreToolUseのBashマッチャーで git commit を検知し、先にテストスイートを走らせる。テスト失敗時はexit code 2を返してコミットをブロックする。
エンジニアのComute氏(@commte)も、Hooks機能の利便性についてXで言及している。
公式ドキュメントでもHooksの設計思想と実装パターンが詳しく解説されている。
Skills——再利用可能なワークフローを作る
Skillsは、Claude Codeにドメイン固有の知識を与える仕組みだ。 .claude/skills/ ディレクトリにSKILL.mdファイルを配置すると、スラッシュコマンド(/skill-name)で呼び出せるようになる。
Skillの基本構造
.claude/
skills/
review-pr/
SKILL.md # スキル定義(手順、ルール、テンプレート)
template.md # 補助ファイル(任意)
SKILL.mdには、Claudeが特定のタスクを実行する際に従うべきステップ、出力フォーマット、品質基準などを記述する。
実用的なSkill例
| スキル名 | 用途 | 呼び出し |
|---|---|---|
| review-pr | PRのdiffを読みスタイルガイドに照合してコメント | /review-pr |
| deploy | テスト→ビルド→ステージングデプロイ | /deploy |
| research | サブエージェントで並列リサーチ | /research |
| simplify | 完成コードの簡素化・リファクタ | /simplify |
Boris Chernyは日常的に /simplify スキルを使い、Claudeが書いたコードを簡素化してから提出している。これにより「AIが書いた冗長なコード」問題を体系的に解決している。
Anthropic公式のSkillsガイド(32ページPDF)も公開されており、7ステップでSkillsを習得できる。
Boris Chernyのワークフロー——1日30本PRの秘密
Claude Code開発者Boris Chernyは、1日に20〜30本のPRを出荷する。その秘密は3つある。
① Plan Mode → Auto-Accept
Chernyのワークフローの核心は、Plan Modeで計画を練り、納得してからAuto-Acceptモードで一発実装するというフローだ。
1. claude を起動
2. Plan Mode でタスクを説明
3. Claude が計画を提示
4. 計画に納得するまで対話を往復
5. Shift + Tab で Auto-Accept Edits をON
6. Claude が計画に沿って一発実装
「良い計画があれば、Claudeは通常ワンショットで実装を完了する」とCherny自身が述べている。
② 5並列セッション
Chernyは5つのターミナルタブを開き、それぞれ異なるGitチェックアウトで作業する。加えてWeb版で5〜10セッションを追加。合計10〜15のClaude Codeセッションを同時稼働させている。
10〜20%のセッションは想定外のシナリオで破棄されるが、残りの80%以上が成果物として出荷される。VentureBeatの記事でもChernyのワークフローが詳しく紹介されている。
https://venturebeat.com/technology/the-[creator](/category/creator)-of-claude-code-just-revealed-his-workflow-and-developers-are
③ CLAUDE.mdの継続改善
Anthropic社内では、チームメンバーがPRに @.claude タグを付けてCLAUDE.mdへの学びを共有する文化がある。ミスが起きるたびにルールを追加し、同じミスの再発を防ぐ——これがCLAUDE.mdを「生きたドキュメント」にする鍵だ。
コンテキスト管理——長いセッションで失敗しないために
Claude Codeのセッションが長くなると、コンテキストウィンドウが圧迫されて出力品質が落ちる。これを防ぐテクニックがある。
| コマンド | 用途 |
|---|---|
/compact | 過去のやり取りを要約してトークン削減 |
/clear | セッションをリセットして新たに開始 |
/context | 現在のコンテキスト使用量を可視化 |
HANDOFFパターン
タスクがセッションをまたぐ場合、HANDOFF.mdを書かせるテクニックが効果的だ。
セッションをまとめてHANDOFF.mdに書いてください。
何を試したか、何がうまくいったか、何がうまくいかなかったかを、
次のエージェントがこのファイルだけ読めば作業を引き継げるように説明してください。
新しいセッションでHANDOFF.mdのパスだけ渡せば、ゼロからの再説明なしに作業を再開できる。SitePointの解説記事でもこのパターンが詳しく紹介されている。
MCP連携——外部ツールと接続する
MCP(Model Context Protocol)は、Claude Codeを外部ツールと接続するためのプロトコルだ。GitHub、Slack、データベース、ブラウザ自動化など、1,000以上のMCPサーバーが公開されている。
必須級のMCP連携
| MCP | 用途 | セットアップ |
|---|---|---|
| Playwright | ブラウザ自動化・E2Eテスト | claude mcp add playwright |
| GitHub | PR・Issue操作 | claude mcp add github |
| Context7 | ライブラリドキュメント参照 | claude mcp add context7 |
| Figma | デザイン↔コード双方向連携 | claude mcp add figma |
特にPlaywright MCPは、テストコードを一切書かずに自然言語だけでE2Eテストを実行できる点が革新的だ。DevelopersIOの解説記事が詳しい。
非エンジニアの第一歩——「2つのファイル」から始める
Claude Codeはエンジニアだけのツールではない。非エンジニアが始める場合、最初にやるべきことはたった2つだ。
- CLAUDE.mdを作る: 自分の業務内容、よく使うファイル形式、出力の好みを記述
- 1つのSkillを作る: 最もよく繰り返す作業(レポート生成、データ整形など)をスキル化
この2つだけで、日常業務の多くを自動化できる。情報発信者のテツメモ氏(@tetumemo)は、非エンジニアがまずやるべき初期設定についてXで紹介している。
StartLinkの調査によれば、非エンジニアがClaude Codeを導入した結果、ルーティンタスクの所要時間が平均60〜70%削減されたという報告がある。
日本企業の導入事例に学ぶ
DMM——データ組織全体で導入
DMMではデータ組織全体にClaude Codeを導入し、1人あたり月額150ドルの予算を設定して運用している。予算消化率は50〜80%で、最も効果が高いのはコーディング支援の領域だったと、DMM Developers Blogで公開されている。
Wantedly——Agent Skillsでオンボーディング効率化
WantedlyではAgent Skillsを活用し、新メンバーのリポジトリオンボーディングをClaude Codeとの対話だけで完了できる仕組みを構築した。その詳細がWantedly Engineer Blogで解説されている。
Gemcook——全社導入で数万行のコード生成
Gemcookは2026年2月に全社でClaude Codeを導入。一部のメンバーは数日間で数万行のコードを生成し、開発速度が劇的に向上したとZennで報告されている。
セットアップチェックリスト
最後に、Claude Code導入時のチェックリストをまとめる。
| ステップ | やること | 優先度 |
|---|---|---|
| 1 | CLAUDE.mdをプロジェクトルートに作成 | 必須 |
| 2 | ビルド・テスト・リントコマンドを記載 | 必須 |
| 3 | コーディング規約・アーキテクチャ概要を追記 | 必須 |
| 4 | Hooksで自動フォーマットを設定 | 推奨 |
| 5 | 危険な操作をブロックするHookを追加 | 推奨 |
| 6 | 繰り返すタスクをSkill化 | 推奨 |
| 7 | Playwright MCPを接続 | 任意 |
| 8 | GitHub MCPを接続 | 任意 |
| 9 | CLAUDE.mdをGitにコミット | 必須 |
| 10 | ミスが起きたらルールを追加する運用を開始 | 必須 |
Claude Codeは、設定しなくても動く。だが、設定したものだけが圧倒的な成果を出す。
最初のCLAUDE.mdを書き終えた後、あなたは何を自動化するだろうか。
参考文献
- Best Practices for Claude Code — Claude Code公式ドキュメント
- Automate workflows with hooks — Claude Code公式ドキュメント
- Inside the Development Workflow of Claude Code's Creator — InfoQ
- Claude Code Context Management — SitePoint
- おすすめ Claude Code 設定・運用まとめ — Wantedly Engineer Blog
- データ組織へのClaude Code導入 — DMM Developers Blog
