宇宙をAI計算の基盤にする「Project Suncatcher」
GoogleはPlanet Labsとともに「Project Suncatcher」と呼ばれる独自の構想を進めている。計画では、半径1kmに81機の衛星を展開した計算クラスタを軌道上に形成し、Google独自のAIアクセラレータ「Trillium世代のTPU(Tensor Processing Unit)」を搭載する。衛星間はレーザーを用いた「自由空間光通信」でリンクし、大規模なAIワークロードを分散処理する設計だ。
まず2027年初頭に試験衛星2機を打ち上げ、軌道上での動作を検証する予定だ。GoogleはすでにTrilliumTPUを粒子加速器に通して低軌道相当の放射線への耐性を確認したとする論文を公表しており、技術的な基礎固めを着実に進めている。SpaceXとの正式な契約はまだ締結されていないが、ウォールストリート・ジャーナルは「交渉は高度な段階にある」と伝えている。
なぜ宇宙なのか——地上データセンターの限界
地上のデータセンターは今、深刻な制約に直面している。AI需要の急拡大に伴い、電力確保・冷却・土地・送電網容量が世界各地でボトルネックになっている。軌道上であれば、太陽光による途切れない電力供給、宇宙空間への廃熱放出、地理的制約からの解放といった理論的なメリットがある。
ただし商業的な採算ラインはまだ遠い。Google社内の試算では、コスト採算の分岐点はキログラム当たり200ドルとされている。これを実現するにはSpaceXの大型ロケット「Starship」が年間約180回飛行し、打ち上げコストを現在の約90%削減する必要がある。現状ではあくまで技術的可能性の検証段階であり、商業スケールへの移行には相当の時間がかかるとみられている。
SpaceXのIPO戦略とAI業界への影響
今回の動きは、SpaceXが2026年6月を目標に準備する株式公開(IPO、想定時価総額1.75兆ドル)とも連動している。SpaceXは投資家向けに「宇宙がAI計算の最安拠点になる」というストーリーを描いており、GoogleやAnthropicとの協議はその裏付けとなる材料となっている。
Anthropicは同週、SpaceXと宇宙計算インフラの活用について関心を示したことが伝えられた。2026年2月にSpaceXとxAIが合併したことで、SpaceXはイーロン・マスクのAI部門であるxAIが保有するメンフィスのコロッサスデータセンター(GPU22万枚超)とも連携する体制となっており、AI計算インフラの垂直統合において独自のポジションを確立しつつある。
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