「退職金がいくらもらえるか、把握していますか?」——この質問に即答できるエンジニアは少ない。日本のテック企業では、従来型の退職一時金から企業型DC(確定拠出年金)への移行が進んでいる。転職が多いエンジニアにとって、退職金制度の理解は将来の資産に直結する。
退職金制度の3つのタイプ
| 制度 | 仕組み | 受取額の決まり方 | 採用が多い企業 |
|---|---|---|---|
| 退職一時金 | 退職時にまとまった金額を支給 | 勤続年数と最終給与で決定 | 大手[SIer](/tag/sier)、製造業系 |
| 確定給付年金(DB) | 企業が運用し、あらかじめ決まった額を給付 | 勤続年数と給与で算定式に基づき決定 | 大企業、金融系 |
| 確定拠出年金(DC) | 企業が毎月掛金を拠出し、従業員が運用 | 拠出額と運用成績で変動 | テック企業、外資系 |
テック業界で増えているのは企業型DCだ。メルカリ、サイバーエージェント、LINE、楽天など多くのテック企業が採用している。DCは「自分で運用する」ため、投資知識の有無が退職金額に大きく影響する。
企業型DCの運用商品の選び方
| 商品タイプ | 期待リターン | リスク | おすすめの人 |
|---|---|---|---|
| 定期預金 | 年0.01%程度 | ほぼゼロ | 60歳直前で元本保全したい人 |
| 国内債券ファンド | 年0.5〜1.5% | 低 | 安定志向の人 |
| バランスファンド | 年2〜4% | 中 | 選ぶのが面倒な人 |
| 外国株式インデックス | 年4〜7% | 高 | 20〜[40代](/tag/forties)で時間的余裕がある人 |
30代のエンジニアなら、退職まで30年近くある。定期預金に入れておくのは「確実にインフレに負ける選択」だ。外国株式インデックスに100%配分して、長期の複利効果を最大化するのが合理的だ。50代に近づいたら徐々に債券比率を上げればいい。
転職時の退職金ポータビリティ
| 転職パターン | 退職一時金 | DB | 企業型DC |
|---|---|---|---|
| テック企業→テック企業 | 支給(勤続年数でリセット) | 脱退一時金 or 移管 | 新しい企業のDCに移管 |
| テック企業→[スタートアップ](/tag/startup) | 支給 | 脱退一時金 or iDeCoへ移管 | iDeCoに移管 |
| テック企業→[フリーランス](/tag/freelance) | 支給 | 脱退一時金 or iDeCoへ移管 | iDeCoに移管 |
| 外資テック→日系企業 | 該当なし(RSU精算) | — | 新しい企業のDCに移管 |
転職が多いエンジニアにとって、DCの最大のメリットは「ポータビリティ」だ。退職一時金は転職のたびに勤続年数がリセットされるが、DCは転職先に持ち運べる。仮に3社を渡り歩いても、DCの残高は通算で積み上がる。
退職金の受け取り方と税金
| 受取方法 | 所得の種類 | 控除 | 税負担 |
|---|---|---|---|
| 一時金(一括受取) | 退職所得 | 退職所得控除(勤続年数に応じて増加) | 軽い(分離課税+1/2課税) |
| 年金(分割受取) | 雑所得 | 公的年金等控除 | 他の所得と合算されるため注意 |
| 併用(一部一時金+一部年金) | 上記の組み合わせ | 両方の控除を活用 | 最適化が可能(要シミュレーション) |
一般的に、勤続年数が20年以上なら一時金で受け取るのが税制上有利だ。退職所得控除は勤続年数が長いほど大きくなり、さらに1/2課税が適用されるため、実効税率が大幅に下がる。ただし、2024年の税制改正で退職所得控除の計算方法に変更があったため、最新の情報を確認してほしい。
エンジニアの退職金を最大化する3つのアクション
| アクション | 効果 | いつやるか |
|---|---|---|
| 企業型DCの運用商品を見直す | 定期預金→外国株式インデックスで期待リターン向上 | 今すぐ |
| マッチング拠出を最大額にする | 税制優遇を最大化 | 今すぐ(制度がある場合) |
| 転職時のDC移管を忘れない | 放置すると国民年金基金連合会に自動移管され手数料で目減り | 転職の都度 |
退職金制度は「入社時に説明を受けて以来、見たことがない」という人が多い。しかし、DCの運用商品を定期預金から外国株式に変えるだけで、30年後の退職金が数百万円変わる可能性がある。あなたの企業型DCは、今どの商品で運用されているだろうか。
なお、本記事は一般的な退職金制度の解説であり、個別の資産運用アドバイスではない。具体的な運用判断はFPや税理士に相談されたい。
