コネチカット「AIRT法」が設ける4つの柱
コネチカット州議会は5月1日、上院32対4、下院131対17という圧倒的多数でSenate Bill 5「AIRT法」を可決した。 同法は(1)AI生成コンテンツの出所証明・透明性確保、(2)AI活用で実施した大規模解雇をWARN Act届出に明記する義務、(3)フロンティアモデル開発企業の従業員が「壊滅的リスク」を通報できる内部告発者保護、(4)州政府によるAI規制サンドボックス制度の4つを柱とする。
とりわけ「AIを活用した人員削減の開示義務」は全米初の規定として注目を集めている。 MITの研究が示す通り、AIによる雇用への影響は多くの予測より緩慢だが確実に進行している。 コネチカット法はその変化を「可視化する義務」を企業に課した最初の事例だ。
ジョージア州:共和党知事が署名した2つのAI規制
ジョージア州はAI規制に慎重な共和党知事Brian Kempが5月に2本のAI規制法案に署名し、「共和党系州による初のAI規制成立」として注目された。
SB 540(チャットボット安全法)は、チャットボット運営者にユーザーへのAI告知義務と未成年保護制限を課し、ユーザーが自殺念慮を示した場合の危機対応プロトコルを義務づける。 MetaやGoogleのような大手テック企業のプラットフォームに組み込まれたチャットボットも対象に含まれるため、プラットフォーム側の実装コストは小さくない。
SB 444(ヘルスケアAI規制法、2027年1月施行)は「AIシステムや自動化ツールだけに基づいた健康保険の適用判断を禁止」する。 保険カバレッジの決定には必ず人間のレビュー担当者を介在させることを義務づけるもので、AIによる自動却下が問題化していた保険業界に直接打撃を与える。
連邦vs州:「10年凍結」提案は否決
トランプ政権は連邦レベルのAI規制を緩和する一方、各州のAI規制を禁止・凍結する条項を「One Big Beautiful Bill Act」に盛り込もうとした。 しかしこの「州AI規制の10年凍結」条項は上院で99対1という圧倒的多数で削除された。 同様の試みは国防授権法(NDAA)でも失敗に終わり、州の立法権限は守られた形だ。
3月20日に発表された「ホワイトハウスAI政策フレームワーク」は連邦統一法への移行を議会に促す内容だが、現時点では拘束力を持たない。 中国がAI包括法の制定を正式確認した流れと対比すると、「包括的な規制」を採る中国と「分散型・州主導」で進む米国という対照的なガバナンスモデルが浮かび上がる。
ルイジアナ・イリノイ・ワシントン:5月末の最前線
5月29日時点でも立法ラッシュは続いている。 ルイジアナ州では3本のAI法案が知事に送付され、2本がなお最終投票待ちだ。 イリノイ州では9本のAI関連法案が会期末の採決待ちとなっており、日曜の閉会前に一部が成立する可能性がある。 ワシントン州はデジタル肖像権を保護する「SSB 5886」が6月10日に施行予定で、AIによる個人の外見・声紋の無断複製を禁止する。
カリフォルニア州はCA SB 942により2026年1月1日からAI生成コンテンツへの潜在的出所情報の埋め込みを義務づけている。 コロラド州SB 24-205はアルゴリズム差別防止と影響評価義務を定め、2026年6月30日の施行を控えている。
法務・ポリシー視点:企業コンプライアンスの4大変化
法務専門家の視点で今後の企業対応を整理すると、4点に集約される。
第一に「AIシステムの目録管理」が急務だ。どのツールがどのリスクカテゴリに該当するかを把握していなければ、州ごとの要件への適合確認ができない。
第二に「人間レビューの設計」だ。ジョージア州の保険判断規制は氷山の一角で、雇用・信用・医療といった「重要決定」領域でのAI利用には人間の関与を設計段階から組み込む必要がある。
第三に「内部告発者保護と報告体制」だ。コネチカット法はフロンティアモデル開発者に具体的な義務を課す一方で、従業員の通報窓口整備も求めている。
第四に「AI利用の開示」だ。チャットボット、採用スクリーニング、コンテンツ生成のいずれにおいても、AIが関与していることをユーザーや規制当局に透明に示す仕組みが必要になる。
コンプライアンスの「追跡」から「実証」への転換点が2026年だ。 あなたの会社のAI使用状況は、50州の新法すべてに対応できているだろうか。
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